職務や勤務地、労働時間などが限られている正社員のことをいう。「ジョブ型正社員」とも呼ばれ、欧米では一般的な雇用形態とされている。正社員と非正規労働者との中間的な雇用形態に位置づけられる。いま注目を集めているのは、安倍自公政権がその普及・促進を図ろうとしているからだ。
狙いは(1)多様な働き方の実現(2)非正規雇用から正規雇用へ近づける――と説明されているが、背景には、「構造不況産業から成長産業へ労働力の移動を図る」との思惑がある。労働力の移動は、人口減少社会の中、経済成長の果実を得るには欠かせない成長戦略だからだ。その意味でアベノミクスの一つと言っていい。
これに対し、労働界は反発している。連合は「賃金カットなどこれまでの正社員に対する労働条件の引き下げ手段に悪用される。解雇されやすい正社員を作り出し、新たな格差を生み出す」と指摘する。不採算部門の閉鎖など企業の都合で安易に首切りされては、「働くものの雇用を脅かす改悪政策」ということだろうか。「多様な生き方」「非正規から正規へ」といった美名に隠れて「企業の論理」が見え隠れするわけだ。
そうならないためにも、どのような場合に解雇ができるのかそのルール作りが必要だ。政府もそこはわかっていて、2013年度中に有識者懇談会を開いてルール作りを検討するとしている。