オタクの世界には「聖地巡礼」という言葉がある。宗教的な言葉というわけではない。漫画やアニメの舞台、あるいはモデルとなった場所を巡る楽しみのことだ。映画ファンがロケ地となった観光名所を訪れるのは昔からよく行なわれてきた。ところが、アニメの「聖地」は一般的な公共施設であることも多く、それ自体に観光的な見どころが存在しない場合もある。あくまで「作中に出てくる」こと自体に付加価値があるのだ。
巡礼が流行ると、自治体は気づき始めた。マニアが落としていくお金の経済効果がばかにならないことを。「誰もが知っているヒット作」である必要はないのであった。深夜アニメでも、一定層の支持があれば、来訪者が増える傾向だ。
とはいえ、自治体の側にファンを受容する体制がないと、せっかくの「お客」も単なる「よそ者」に過ぎず、グッズ販売やイベントなどのビジネスに結びつかない。いち早くこのことを理解した自治体は、積極的に「ご当地アニメ」に協力するようになっている。具体例としては、千葉県鴨川市と『輪廻のラグランジェ』、茨城県大洗町(おおあらいまち)と『ガールズ&パンツァー』などのコラボが挙げられるという。