政府は8月8日、小松一郎氏を内閣法制局長官に起用する人事を発令した。
内閣に直属する機関である内閣法制局は、政府提出法案の事前審査や憲法解釈が主な任務だ。そのため、「法の番人」とも称される。内閣法制局長官はその長で、身分は特別職公務員である。
新長官に就任した小松氏の前職は駐仏大使。外務省で条約課長や国際法局長を歴任したが、内閣法制局勤務の経験は全くない。本来の慣例に従えば、内閣法制局次長が内部昇格するはずだった。
極めて異例の人事は「安倍晋三首相の強い意向が働いた」との解説付きで、報道されている。安倍首相と言えば、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈の変更に強い意欲を持ち、第一次安倍内閣(2006~07)でも、有識者会議を設置して取り組んだ経緯がある。そしてその有識者会議に裏方として関わったのが小松氏だった。
前任の長官だった山本庸幸(つねゆき)氏は、集団的自衛権に関する政府の憲法解釈の変更に慎重だったとされる。実際、第一次安倍内閣時代の2007年6月、参院外交防衛委員会で政府の憲法解釈について「その取り扱いについては、これは慎重でなければならない」と答弁している。小松氏の起用は、憲法解釈の変更に向けた布石と見ていい。
衆参のねじれが解消したことで、安倍首相が「安倍カラー」を出そうと腐心している。