「ウォール街を占拠せよ(Occupy Wall Street)」。2011年9月、アメリカ・ニューヨークで格差社会に反対する抗議活動が起こる。
2008年のリーマン・ショックを契機とした世界金融危機は、アメリカだけではなく世界中を大不況に陥れた。雇用は急速に悪化し、とくに若年層の失業者が増加した。しかし、国や経済界は有効な手立てを打たないまま、いたずらに月日が流れる。業を煮やしたNPO団体が市民に呼びかけ、アメリカの金融の中心地であるウォール街で座り込みやデモを行ない、雇用の改善を訴えたのだ。この活動は全米に広がり、2011年10月には世界80か国以上で同様の抗議活動が行なわれた。
この抗議行動に参加した人々が掲げたスローガンが、「We are the 99%(私たちは99%だ)」だ。
人口の1%である富裕層に富が集中し、残り99%の人々をますます貧困に陥れる経済政策を批判し、経済格差を解消するために富裕層への課税強化などを訴えたのだ。
しかし、こうした活動にも関わらず、1%の富裕層が利益を上げるために、残りの99%を支配する構造は相変わらず続いている。ジャーナリストの堤未果(つつみ・みか)氏は、著書『(株)貧困大国アメリカ』(岩波書店)で、「今のアメリカ民主主義は『1%』によってすべてが買われているのです。司法、行政、立法、マスコミ……」と指摘している。堤氏によれば、1%は利益を重要視する多国籍企業や金融業界で、彼らによって99%の人々の暮らしは搾取され、厳しい状況に置かれているという。
日本も参加を表明したTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)が始まれば、関税の完全撤廃などで多国籍企業はこれまで以上に自由な経済活動ができるようになる。
だが、99%の人々も、ただ手をこまねいているだけではない。世界中の人々とつながることで、暮らしを守るために1%に対抗する動きも始まっている。諦めずに行動する先にある一筋の光を信じたい。