陰陽道(おんみょうどう)でいう表鬼門とは北東の方角を意味し、京都御所の表鬼門にあたるのは、比叡山のふもとにある赤山(せきざん)禅院である。そのため、古くから方除(かたよ)けの寺として知られている。鬼門の障りがなくなるという本尊の赤山明神のお札を家に貼っている京都の人がたくさんいる。この赤山禅院で中秋の名月の日(2013年の中秋の名月は9月19日)に行なわれる行事が、天台宗の秘法とされる「へちま加持」である。千日回峰行を修めた大阿闍梨(だいあじゃり)が、ぜん息や気管支炎などを取り除き、へちまへ封じ込める祈祷(きとう)のこと。中秋の名月に行なうのは、この日から欠けていく月のように、病が快方へ向かうことを祈るためである。
民間療法の薬としても用いられる「へちま」は、秋になるころに地面の近くで茎を切ると、切り口から液がたくさん分泌され、数日のうちに1~2リットルも樹液が溜まる。これが化粧水として知られているヘチマ水であり、この液はせき止め薬として効能があるといわれている。沖縄ではへちまそのものを生食して風邪の薬としており、インドでは、果肉や花、枝葉の部分を咳や痰の薬に用いているという。
中秋を過ぎると、赤山禅院の次の年中行事は11月のもみじ祭である。紅葉寺としても名高く、たくさんの参拝客が紅葉狩りに訪れる。