政府は「スポーツ庁」設置に向けて本腰を入れるという。
スポーツ庁は、文部科学省、厚生労働省など各府省にまたがるスポーツ行政を一元化して担う役所のことで、2011年施行のスポーツ基本法の附則に、設置の検討が明記された。政府の教育再生懇談会が2009年5月にまとめた第4次報告でも、創設が盛り込まれている。
設置構想が大きく動いたのは、2020年夏季五輪の東京開催決定を受けてのことだ。
菅義偉(すが・よしひで)官房長官は9月9日の記者会見で「スポーツに関する総合的、一体的な行政組織のあり方について検討を進めていく必要がある」とスポーツ庁設置の必要性を強調、そのうえで「今までの縦割りではなく、全体として(東京五輪を)成功に導くことができるような体制」と指摘した。具体的には選手強化組織、施設整備費などの予算を一元化し、選手育成にも力を入れる。
スポーツ庁構想については、五輪の東京開催決定も後押しして、世論はおおむね好評だ。
ただ、懸念されるのは「競技振興」「選手育成」といった美名の下で、スポーツ利権が跋扈(ばっこ)しないか、ということだ。
施設整備や選手強化費など多額な税金投入が行われるが、その使途に透明性を持たせるべきだ。選手強化費を巡っては柔道界で、不明朗な金銭の流れが明らかになったばかり。施設整備についても、政治家の「天の声」による発注や談合、官僚の天下りが横行しないよう、厳しいチェックが必要だ。