『テコンV』は韓国最初の劇場用巨大ロボットアニメ。「テコン」はテコンドーで戦うところから来ている。1976年に公開され、日本での上映機会がほとんどなかったわりには、オタクたちに語り継がれてきた「怪作」だ。なにせ、『マジンガーZ』などの日本のロボット作品を「おおいに参考にした」内容となっているのだ。DVDなどで近年は容易に観られるようになったが、カルト映画としては不思議な魅力がある作品で、ツッコミながら観るには楽しめる内容だろう。

 とはいえ、当の韓国ではテコンVにあやしいイメージなどない。むしろ国民的キャラクターだ。日本作品に近すぎるという事実は、近年、ネットのおかげでようやく韓国の若者たちの知るところとなった。そんな調子だから、2005年には韓国の政府広報CMで、かの竹島の守護神として描かれたこともある。竹島を守らせるロボットがかなりの純度で「日本製」というのは、ちょっと迂闊(うかつ)な気もするのだが。2013年には、彫刻家のキム・テッキ氏が竹島に巨大なテコンVを建てるという計画が話題になった。これはさすがに、自国内で反対され中止になったという。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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