伝統的なものは、普遍的な「良さ」があるからこそ生き残っている。江戸時代に生まれたこけしは東北地方で作られる木彫りの人形だが、大正を迎えると欧風のおもちゃの流入に押されて、職人が減るという危機を迎えた。だが、そのころから子どもよりも大人にアピールする「工芸品」として見出され、現在に連なる「収集」という楽しみ方が生まれたという。そして現在。こけしの新たなファンは、意外にも30代を中心とする女性たちだ。彼女たちは「こけし女子」、略して「こけ女」と呼ばれている。
こけしにはシンプルな愛らしさがある。戦略的な「媚び」のあるキャラクターよりも、オトナ女子には魅力的に映るのだろう。一つひとつが手作りという点も、「一点もの」を大事にするいまどきの感性とマッチしている。ブームは数年前からと言われていて、東京など大都市で展覧会も開催。その扱われ方はオシャレというか、まるで「ポップなサブカルチャー」といった趣きだ。先の震災ではからずも東北の文化が見直されており、こけしのブレイクは復興支援につながっている側面もある。実際、東北に足を運び、こけし制作を体験する「こけ女」も少なくない。