10月1日、安倍晋三首相は2014年4月から消費税を5%から8%に上げると発表した。デフレからの脱却を目指し、株高・円安、物価上昇率2%を掲げたアベノミクスも道半ばなのに、増税することで経済が腰折れするのではないかという批判もあったが、首相は「大胆な経済対策を果断に実行し、この景気回復のチャンスをさらに確実なものにすることで、経済再生と財政健全化は両立し得る。これが熟慮した上での結論だ」と増税への決断を下した背景を説明した。
だが、消費税を上げることに賛意を示してきた朝日新聞でさえ、増税で予想される景気悪化への対策を理由に5兆円規模の経済対策を打ち出し、その柱に「法人税減税」を据えたことに対して「景気悪化対策とは反する政策」だと疑問を呈している。
そのうえ、増税分は社会保障に全額使うというのだから、これが本当なら財政再建のためのカネなど、どこを探しても出てくるはずはないのである。
『週刊ポスト』(10/11号、以下『ポスト』)も〈消費税増税+法人税減税=国民の収入アップ〉というのは真っ赤なウソだと噛みついている。
「実は、日本の全法人約260万社のうち、75%の約195万社は赤字で法人税を払っていない。それらの企業は減税が実施されても収益は変わらないから、減税で給料を上げることなどできない。仮に、残り25%の企業が減税分で賃上げをしたとしても、『国民全体の収入アップ』になる道理がないではないか。(中略)
厚生労働省の毎月勤労統計調査によると、今年7月の全産業平均の月給は前年比で約1700円の減少。14か月連続のマイナスである」
5兆円ものカネは大企業と公共事業への大盤振る舞いで大方が消え、大多数の国民には増税に加えて“値上げ地獄”が待っているのである。
『ポスト』の10/4号では、家計費が2割増になると報じている。
なぜならパン、牛乳、ハム・ソーセージからチーズ、冷凍食品など主要食品が10~11月に軒並み値上がりする。
日本酒やワインも大手メーカーが横並びで1000品目以上の値上げ方針を打ち出し、ごま油などは今年2度目の値上げをするという。食品インフレだけではない。
「国民生活を背後から脅かすのが公共料金、年金・医療、教育費などの負担増だろう。
厚生年金保険料は9月から年間約9000円引き上げられ、年金受給額は今後3年間で『6万8700円』減らされる。高齢者(70~74歳)の医療費窓口負担は来年4月から2倍になる」
経済ジャーナリストの荻原博子氏がこう指摘している。
「庶民の家計は食料品値上げで食費が1割近くアップ、電気・ガス・水道の光熱費も1割アップ、その他にも教育費も上がり、マイカーを持っている世帯は自賠責保険も上がります。政府の試算にはこれらが含まれていません。
それを合わせると消費増税後に年収300万円世帯は年間40万~60万円、500万円世帯なら年間60万~70万円という、年収の2割近くに相当する負担増を迫られることになるはずです。住宅ローンなどが払えなくなる世帯が増えることも考えられます」
8月からは生活保護を受給できる判断基準を厳しくした。消費税増税は低所得者や年金生活者の懐を直撃する。貧しい者、弱い者は死ねといわんばかりの安倍政権の新自由主義政策は、1%の富裕層のためのものだと断じざるを得ない。
いくらウソをついても国民は“バカ”だから何もいわないし、マスコミはものをいえないように“飼育”してある。安倍首相の腹の中はこうなのではないか。こういうときこそホンネをいえる週刊誌の出番であるはずだ。