安倍政権は9月20日の産業競争力会議の会合で「医学部新設」を容認する方針を打ち出した。
医学部の新設は、1979年の琉球大を最後に凍結されている。当時、医師過剰や過剰に伴う医療費の増加が懸念されたためだ。
しかし、近年、勤務医不足やへき地における医師不足などが顕在化し、民主党政権時代に、文部科学省に新設検討会が設置された。ただ、同党の下野とともに医学部新設の話は尻すぼみした。
一度お蔵入りしたはずの医学部新設が、再び浮上したのはなぜか。本来、大学教育を所管する文科省や医療行政を扱う厚生労働省が発信源のはずだが、産業競争力会議というのがミソだ。
医学部新設問題に詳しい医療ジャーナリストが言う。
「医師不足、医師の偏在は東日本大震災でも浮き彫りになりましたが、厚労、文科両省で新設問題を議論していては、『抵抗勢力』の意向が働き、思うように進まない。そこで産業競争力会議を足場に『規制改革』という錦の御旗が振られた」
同会議では、地域を限って大胆な規制緩和に取り組む「国家戦略特区」の導入が議論されており、アベノミクスの看板政策の一つでもある。「医学部新設」にとっては絶好の追い風が吹いているわけである。
医学部新設が有力なのは、宮城、千葉、静岡の3県。「医学部新設は地域医療の再生はもちろん、雇用にもつながる」と熱い期待を寄せている。
こうした動きに対し、日本医師会は「大学に医師が集められ、地域医療が崩壊する」との理由で猛反発。「既存の医学部の定員増で十分対応できる」との指摘もある。