建築史家の米山勇(よねやま・いさむ)氏が、子どもたちに建てものの本質を体で理解してもらおうと発案したのが「けんちく体操」。江戸東京たてもの園の学芸員、高橋英久(たかはし・ひでひさ)氏らとともに、2002年にワークショップが始められた。ならばもっと早く人気が出ても良さそうなものだが、当初はあまり積極的な活動は行なっていなかったらしい。現在は計4人の「チームけんちく体操」が各地を飛び回る体制に。書籍やDVDの発売、マスコミでの紹介で知名度を上げ、2013年には日本建築学会教育賞(教育貢献)を受賞した。
「けんちく体操」は、有名な建築物の写真をプロジェクターで映し出し、参加者が思い思いに「マネ」をするといった要領。こう書くとシュールなようだが、マネのためには細部までよく観察する必要がある……というのがポイント。そして、実際にポーズが完成したら、すぐに止めず、そのままの姿勢で「なりきる」ことを求められる。一つの建てものに有する人数は高度なものほど増えていき、体勢はどんどんきつくなる。これこそが無機的な「構造」というものを有機的に理解するきっかけとなるのだ。「建て物の気持ちが分かる」とも表現される。
ちなみに、よく紹介されるのが「東京タワー」の体操で、力強く直立しているだけなのでやりやすそう? 一方、お台場の「フジテレビ本社ビル」は、子どもが丸まって球体展望室を表現する7人編制の大作である。