都市型の現代人は、ビジネスでもプライベートでもスマホやパソコンなしでは生きられない。インターネットをつないでいる状態が当たり前になると、なんとなくモニターの前にいないと落ち着かない「中毒」に陥ることもある。そうでなくとも、SNS全盛の昨今、顔の見えない「つきあい」に疲弊する「ソーシャル疲れ」がよく語られる。であるならば、まったくネットにつなげない日があっていい。生活のコントロールが未熟な若者ならばなおさらだ。
厚生労働省の調査発表によれば、「ネット依存症」の疑いがある中高生は推計51万8000人(2013年8月)。このたぐいの政府が計算した数字を軽々に信用するのもまた問題だが、ネットのヘビーユーザーならば、生活が夜型になり、一日のリズムが崩れて体調を崩す事態は、実感として想像できるだろう。なんといっても、若者の本分である学業面での悪影響が心配だ。そこで文部科学省は、こうした「依存」の傾向がある学生を集め、ネットのない環境で約1週間の合宿をする、いわば「ネット断食」の調査研究事業を2014年度にも始める予定になっている。
効果のほどは結果を見るまで判断しかねるが、単純に「未熟な子どもをなんとかしよう」という話ではない。たとえばアメリカでは、こうした「断食」を「デジタルデトックス」と呼び、成人にとっても精神衛生上よいとされている。いま、世界中で「正しいネットとの距離の取り方」が模索されているといった状況なのである。