2013年10月15日、政府は「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律案」(プログラム法案)を閣議決定した。プログラム法案は、医療、介護を中心に社会保障制度の改革内容と実施時期を明らかにしたもので、この秋の臨時国会(第185回)での成立を目指している。
医療分野では、2014~2017年度にかけて、70~74歳の医療費の窓口負担を1割から2割に引き上げる、国民健康保険の運営主体を市町村から都道府県に移すなどが明記されている。また、介護分野では2015年度から、要介護度の低い「要支援者」を保険適用から外して、市区町村事業に移管したり、高所得層の自己負担割合を引き上げることなどが盛り込まれている。
プログラム法案は、昨年11月から今年8月にかけて議論された社会保障制度改革国民会議の報告を踏まえたものとされている。だが、両者を読み比べると、その基本理念は異質のものであることがわかる。
国民会議の報告では、医療や介護は社会保険方式を基本とし、これまでの「給付を受けるのは高齢者で、負担するのは現役世代」という構造から、負担と給付の両面で世代間・世代内の公平が確保された全世代型への改革が打ち出されている。医療や介護で自己負担の引き上げを示唆したのは、厳しい国家財政を考慮したうえでの措置で、本来なら応能負担の原則は社会保険料や税で徹底すべきものという文書作成者の真意が見て取れる。そのため、「低所得層の負担軽減」という言葉が繰り返し使われている。
これに対して、プログラム法案は、一見すると国民会議の報告に沿った内容のように見えるが、根底にあるのは自助・自立といった自己責任論だ。「個々人の自助努力を行うインセンティブを持てる仕組み」を社会保障制度に導入することが盛り込まれている。そのため、同じ自己負担の引き上げでも、導入の意味は大きく異なる。
しかし、病気になったり、介護が必要になったりする背景には、遺伝や社会経済的要因などがあり、自己責任だけでは済まされない問題を含んでいる。プログラム法案の成立が、「病気になるのは自己責任」という風潮を強め、より一層の格差社会を到来させないことを祈りたい。