『週刊現代』(11/2日号、以下『現代』)は“サラリーマンのための週刊誌”をウリにしてきたこともあって「会社の寿命」企画が好きである。だが、週刊誌も広告収入への依存度が高くなっているため、タイトルの付け方で会社側と悶着を起こすことがある。
私が『現代』の編集長時代に「生き残る会社 死ぬ会社」という特集をやったときは、電通を通して講談社の広告部に強いクレームが入った。「死ぬ」というタイトルがまずいというのである。
以後気をつけるということと、そうした記事を掲載する場合は「死ぬ」と名指した企業の広告は同じ号に載せないという約束をさせられた。今回の「すぐ消える会社」はギリギリセーフか。
経済のプロ12人に、日本を代表する30社の将来性を診断してもらったという。長寿力が最も高いと診断されたのは「三菱商事」の85である。
かつての商社は手数料で儲ける単なる“商社”だったが、現在は「成長の見込みのある事業に投資をして育てる、投資銀行的業務が大きなウェイトを占める」(『現代』)ようになってきたことが評価されたようだ。
2位は「トヨタ自動車」で83。「ホンダ」の76、「日産」の62に比べても極めて高いのは、「企業の理念、“イズム”がはっきりしていて、それをハイブリッドなどの技術力、商品開発力に落とし込めている」(小宮コンサルタンツ代表・小宮一慶氏)からだそうである。
全体に評価が低くなってしまったのは電機メーカー。「パナソニック」と「ソニー」は55。「東芝」が70、「日立製作所」が74。「パナ」は20世紀の成功体験から抜け出せない、「ソニー」は過去のブランドにすがるエリート意識が支障になっているという。
そのほかで長寿力が評価されたのは、“丸の内の大家さん”「三菱地所」(80)、泥臭いビジネスモデルがほかでは真似できない「ヤマトHD」(76)、炭素繊維やユニクロ向け特殊繊維などの開発力が抜群の「東レ」(73)、財務健全性が落ち着いている「日本生命」(72)などである。
意外に低いのは「三菱UFJFG」(68)や「野村HD」(54)などの金融機関だが、その理由に「海外で勝てるかどうか」「ITの進化が金融機関のあり方を根底から変えてしまう」というものがある。
IT大手の「ソフトバンク」と「楽天」は、「ソフト」が孫社長のチャレンジ精神が評価され58、「ネット市場は価格競争が激しく消耗戦に突入している」というマイナス点がある「楽天」が56。
長寿力が低いのはどこか。最低が「東京電力」の27。これは説明の必要はないだろう。お次は30のソーシャルゲーム大手「グリー」。10月2日に業績悪化で200人の希望退職を募ると発表したから致し方なかろう。
家電量販店の「ヤマダ電機」が32。一時は飛ぶ鳥を落とす勢いだったが、栄枯盛衰は世の習いか。外食産業の「ワタミ」は38で「マツモトキヨシHD」が40。「日本航空」は47で、ブラック企業ではないのかと批判が高まるユニクロ「ファーストリテイリング」は56である。
生きながらえる秘訣は何か。アセット・ベスト・パートナーズ代表の中原圭介氏はこう語っている。
「50年後まで生き残っているかどうかは企業の社会性にかかっている。国内雇用を維持し、技術力をコツコツと磨き、変化に対応できること。社会的な役割を果たせる企業しか、50年間という長期間にわたって消費者の支持は得られないと思います」
そのほかにも「長生きしている老舗の企業に共通しているのは、地元の評判がすこぶるいい、ということです」(帝国データバンク産業調査部・昌木裕司氏)という見方がある。
生産拠点を賃金の安い海外に移し、儲けたカネはタックス・ヘイヴンを使って税金逃れする企業が後を絶たない。そんな企業が何十年も生き続けることがないことだけは確かなようである。