これも「アベノミクス」ということだろうか。安倍政権が長年続く「減反政策」を見直す。
減反政策は「コメの生産目標を政府が決める生産調整」のことをいう。
コメ余りが問題になってきた1970年代に導入された。コメの生産量を抑えることで価格の低下を防ぐ狙いがある。減反に応じた農家には10アール当たり1万5000円の補助金が支給されるなどの補償措置がある。
本来、国内農業の育成・強化に狙いがあったはずだが、そうした所期の目的通りになっていないのは明らかだ。見直しは過去にも議論されてきたが農業団体や自民党農林族などの反発で実現していなかった。
それにしても、なぜこのタイミングなのか。
一つは、環太平洋経済連携協定(TPP)交渉妥結への備えである。妥結すれば安い農産物が輸入されるため、減反政策を見直して、農業の大規模化を図り、生産性を上げて対抗する必要がある。
もう一つは、衆参のねじれが解消し、次の国政選挙まで3年近くの時間があるため、票を持つ農業団体の反対論を気にせず政策転換の大ナタをふるえるからだ。
政府は2018年度までに減反政策を廃止したい考えだが、零細農家、兼業農家はコメ作りから撤退せざるをえなくなるだろう。机上で経済合理性の物差しだけで政策を行なってはならない。雇用対策や転作指導など農業現場へのしっかりとした配慮が求められる。