いささか悪趣味なユーモアを好むイギリスには、「醜い動物保存協会(Ugly Animal Preservation Society)」という団体がある。だが、単にふざけているわけではない。愛らしい生物は手厚く保護されるのに、醜いと見向きもされないのが世の常。それが種の絶滅につながっては困るということで、「醜い」をウリに認知度を高める活動をしているのだ。

 2013年9月、この協会の新しいマスコットに選出された生物が、ぶよぶよした顔を持つ魚・ブロブフィッシュ。これが「世界で最も醜い動物が決定した」と報道されたが、あくまで「人気投票」なので、記事としては不正確かもしれない(ちなみに得票数で3位は、あのウーパールーパー。決して醜くはないような……)。ブロブフィッシュは和名を「ニュウドウカジカ」といい、オーストラリア、ニュージーランドなどの深海に棲息する。海の底のカニなどを獲るトロール漁業の網に引っかかってしまうため、保護が期待されている。陸に上がると寒天質の顔がつぶれて、ヘタウマのマンガのようなユーモラスな顔になってしまうが、そのインパクト大の写真はネット上のあちこちで散見される。まさに協会の思惑通り、醜さを逆手にとって保護への道が歩み出されたわけである。

 

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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