おひとり様で食べる「ぼっち飯」。「ひとりぼっち」の「ぼっち」から来ているように、これまでは「さみしい」というイメージがつきまとう言葉だった。その意識が変わってきた背景には、久住昌之(くすみ・まさゆき)原作、谷口ジロー作画による漫画『孤独のグルメ』と、そのドラマ化作品が少なからず影響しているらしい。中年男が派手さのない店で酒もなしに飯を食らう様子には、なるほど、スタイルとして確固たるものを感じる。
2013年は、京都大学の学生食堂で「ぼっち席」が支持を受けていることも話題になった。実際にその様子を見れば、目の前に仕切りがあるだけで、立ち食い店などの大衆的なスタイルを取り入れただけの代物。だが、学生とはいえ仲間といつもつるんでいるわけではなく、ひとりで気軽に食事をしたいニーズに合っているのだろう。
そもそも、世間で「グルメ」と言われる人ほど、ひとりの食事に慣れている。美味いレストランに、毎回パートナーをともなって通うのは、予算的にも時間の都合をつけるうえでも難しいものだ。味に貪欲ならば、もとより「ぼっち飯」が基本。よく言われる「プライベートな空間を保つ」ことのみならず、ストレスフルな現代人には「食を純粋にたのしむための時間が必要である」というポイントが理解されるべきだろう。