それは突如、それも一方的に行なわれた。
中国政府が11月23日、東シナ海に防空識別圏を設定した、と発表したことで、東アジアに緊張感が高まっている。
防空識別圏は各国が、領空侵犯に対して迅速に対応するため設定している空域のこと。領土と領海の上部である「領空」とは異なり、国際法上の規定はない。他国の戦闘機などが無断で圏内に侵入した場合、緊急発進(スクランブル)の対象となる。日本の防空識別圏は、第2次世界大戦後、米軍が設定したものを1969年に引き継いだものだ。
問題なのは、今回、中国が設定した防空識別圏が、日本の防空識別圏と広く重なっており、しかも沖縄県の尖閣諸島の上空を含んでいることだ。これは、日本への主権を脅かすものであり、日本の同盟国・米国への挑発でもある。
日中双方から緊急発進した戦闘機が偶発的に衝突する可能性がある。中国は南シナ海や黄海上空にも新たに防空識別圏を設定すると見られる。右肩上がりの経済を背景に軍事大国化する中国だが、「やりたい放題」にもほどがある。アジアの平和秩序を守るためには、中国の行動を容認してはならない。