秋の臨時国会で「タクシー適正化・活性化改正法」が成立した。都市部などでタクシーが多すぎる地域を「特定地域」に指定し、タクシー会社に減車を義務づけるもので、従わない場合は、国が事業者などに勧告や命令を出せる。タクシー業界の過当競争を是正するのが狙いだ。
タクシーを巡っては、小泉政権時代の2002年に新規参入が原則自由化され、台数制限も撤廃された。その結果、大都市を中心に供給台数が増えて、運転手1人当たりの売り上げが減少、歩合制の賃金も減った。タクシー運転手の平均年収は、長時間労働にもかかわらず300万円に満たない。
ただ、この規制強化は10月の所信表明演説で、「今後3年間を、税制・予算・金融・規制制度改革といったあらゆる施策を総動員する『集中投資促進期間』にあてる」と言い切った安倍首相の政策と180度異なる。規制強化はタクシー業界や労組の陳情を受けてのものだろう。「行政が規制の網をかぶせて既得権益を守る」という従来型のパターンが息を吹き返した形だ。
かつては深夜の繁華街でタクシーを拾うのに一苦労したものだが、最近はそんなことはなくなった。利用者が不便にならないよう、法律の運用の際は十分配慮してほしいものだ。