2013年12月、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の無形文化遺産に日本の「和食」が登録された。
無形文化遺産は、その地域で続いてきた芸能や社会的慣習、祭礼行事、伝統工芸などを守っていくための仕組み。食文化では、2010年にフランスの美食術が登録されている。
和食とひとくちに言っても様々だが、今回登録されたのは「寿司」「てんぷら」「すき焼き」など個別の料理ではなく、古くから日本人が暮らしの中で取り入れてきた伝統的な食文化だ。提案理由は、自然を尊重する日本人の精神を表す社会的慣習としての食文化で、具体的には次の4つがあげられた。
(1)新鮮で多様な食材とその持ち味の尊重
(2)栄養バランスに優れた健康的な食生活
(3)自然の美しさや季節の移ろいを表現した盛りつけ
(4)正月行事などの年中行事との密接な関わり
たとえば、もちつきや雑煮を食べる正月の行事、人をもてなすときに用いられる器など、料理そのものではなく日本の食を育んできたものが認められて、今回の無形文化遺産の登録になった。
和食をユネスコに申請したいと考えたのは、子どもたちの食育に携わっていた京都の料理人たちだ。日本の伝統的な料理を知らない子どもが多いことに気づき、このままでは和食が滅びるという危機感から活動を始めた。
昆布や鰹節でとった出汁は美味しい。けれど、毎日、家庭で出汁をとるのは面倒だ。だが、そうした和食の基本を守り、当たり前のことを続けていかなければ、時の流れとともに文化は消えていってしまう。
無形文化遺産に登録されたからといって、伝統的な日本の食文化が守られるわけではない。私たち一人ひとりが日常を丁寧に生きることが、何よりも文化の継承に必要なことではないだろうか。