4月から消費税が5%から8%に引き上げられる。それを見込んだ駆け込み需要で、昨年の新築住宅等の着工数は約98万件で、前年比11.0%増となった。
この伸び率は、1997年の消費税アップ前に駆け込み購入が目立った96年に次ぐもの。だが、前回は、増税後の着工数が前年比マイナス15.6%という激しい落ち込みを見せた。そのため、今回は景気の腰折れを防ぐ目的で、今年4月以降に利用できる「すまい給付金」という新たな制度が作られた。
4月以降に住宅を購入する人には、住宅ローン減税の控除枠も従来の最大200万円から400万円に拡大される。しかし、こちらは住宅ローンを組んでマイホームを購入した人の所得税や住民税をローン残額に応じて差し引く制度で、控除枠拡大の恩恵を受けられるのはおもに借入額が多い高所得層だ。納税額の少ない低所得層は、この制度を利用しても負担軽減効果は変わらない。そこで、新たに作られたのが「すまい給付金」で、住宅購入した人に現金が給付される。
利用できるのは、2014年4月~2017年12月までに自分が住むための家を購入した人で、収入が一定額以下の人。たとえば、住宅ローンを組んで購入する場合は、年収510万円以下が目安(家族構成は、夫婦と中学生以下の子どもふたり。妻は専業主婦の場合。ただし消費税10%時は775万円以下)。給付額は、消費税8%の時は最大30万円、10%になると最大50万円だが、年収や扶養家族の数に応じて異なり、年収の低い人ほど受取額が多くなる。50歳以上で年収が650万円以下の人は、住宅ローンを組まずに購入しても利用できるケースがある。
ただし、2014年4月以降に入居した場合でも、旧税率の5%が適用されている人は利用できない。また、中古住宅は宅地建物取引業者から購入する以外は適用されないなど、利用範囲は限られる(いずれの場合も住宅の要件は床面積が50㎡以上)。
家計の負担を抑えて住宅取得するには、中古住宅の活用は有効な手段だが、国が税制優遇するのは新築住宅が中心だ。それは、日本では、新築住宅等の建設が重要な経済政策になっているからだ。
戦後、日本で長く続けられてきた持ち家政策は、個人に住宅購入させることで、景気を刺激するのが目的だ。すまい給付金の創設も、消費税増税によって国民が住宅取得の意欲を失わないような誘導を図ろうとしている。
だが、すまい給付金がもらえるからと家計の実力以上に高い物件を購入したり、割高なローンを組むのは考えもの。住宅購入は人生最大の買い物ともいえる。制度に踊らされずに、買い時を見極める必要がある。