木の芽とは山椒の若葉のことで、「きのめ」とも、「このめ」ともいう。この木の芽のまだ若い葉をすり潰し白味噌などと混ぜ、竹の子やイカなどと和えたおばんざいが木の芽和えである。山椒に白味噌、竹の子と、京都人好みの味覚がぎゅっと詰まった、春の定番料理といえよう。

 竹の子は、京都市西部の乙訓(おとくに)産がうまいというのが常識になっている。特に「しろこ(白子)」という品種の朝掘りのものが、風味が豊かで柔らかいと定評を得ている。産地の方に聞けば、「収穫後、どれだけ早く茹でるか」がおいしさを決める最大のポイントだとか。また「たけのこ」は、竹林で生育中のものを「筍」と書き、収穫されたものは「竹の子」と書き分けられることが多いと産地で聞き、初めて知った。

 木の芽和えをおいしく食べるには、竹の子は先の柔らかいほうを使い、サイコロ状に切り、出汁でよく煮てうす味をつけておく。肝心な木の芽味噌は、茹でたほうれん草を刻み、木の芽と合わせて擦り合わせる。さらに、西京味噌、砂糖、味醂、うす口醤油で味を調えながらよく擦り合わせてつくる。イカやうどなどの食材と一緒に和え、これを肴に一杯やるのがまたうまいのである。

 

   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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