新入学や花見の季節になると語られるのが、「イッキ飲み」の危険性だ。日本では1980年代以降、飲酒をめぐる若者の悲劇がよく報道されるようになった。急性アルコール中毒で我が子を失った遺族たちの動きもあって、教育現場がこの問題に真剣に取り組むようになり、現在では状況はいくぶん改善されてきたように思える。「イッキ」に格好良さを感じる若者は、もはや少数派だろう。

 若者と酒との関係をめぐるトラブルは、海外でも注視されているようだ。イギリスでいま、「ネックノミネート」というチャレンジゲームが問題になっている。ネック(neck)とはイッキ飲みすること。体質的にはアルコールに強い外国人であっても、とても遊びではすまないような代物だ。参加者はまず、イッキ飲みの様子を動画サイトやSNSに上げてから、別の誰かを「ノミネート」する。指名された者は、24時間以内に同様の行為を繰り返さなくてはならない。相手を打ち負かすのにどんどん強い酒にエスカレートしていくため、しまいには「死のゲーム」に至る危険性が高い。実際、イギリスではすでに数件の死亡事故が起きている。

 ネット上に動画をアップすることは、若者にとって気軽な自己表現の場になりつつある。だが、「視聴者がいる」というプライドや興奮が、若気の至りというにはあまりに深刻な事態をもたらすこともある。子を持つ親は危惧しておくべきだろう。

   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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