3月27日に規制改革会議が提案した「選択療養制度(仮称)」が波紋を呼んでいる。
日本の医療制度では、評価の定まらない技術や薬による健康被害から国民を守るために、健康保険が使える「保険診療」と、評価の定まっていない「自由診療」を同時に行なうことを認めていない。これを破って、一連の治療のなかで自由診療を行なうと、本来なら保険診療が認められている検査や手術なども健康保険が適用されなくなり、患者は医療費を全額自己負担しなければならなくなる。いわゆる「混合診療の禁止」と呼ばれているものだ。
ただし、がんなどを患っていて保険診療では治らなかった患者のなかには、評価が定まっていなくても、新しい薬や治療法を試したいという人もいる。そうした患者の選択肢を増やすという名目で、2006年に新たに開始されたのが保険外併用療養費制度の「先進医療」で、法律では禁止されている混合診療を部分的に認めることになった。この場合、先進医療に係る費用のみが全額自己負担となる。
ただし、先進医療は、保険外の治療や薬をなんでも、保険診療と併用できるわけではない。先進医療で行なえる医療技術や使える薬はリスト化されており、実施できる医療機関にも条件がある。一定程度の安全性と有効性が期待される治療や薬のみを、厚生労働省のコントロール下で利用する仕組みになっている。それらの治療が先進医療で行なわれている間に、評価が定まって治療効果が立証されると、やがて健康保険が適用されて、だれでも使える治療として広まっていく。
これに対して、規制改革会議が提案した「選択療養制度(仮称)」は、医師と患者の間で契約が成立すれば、患者の自己責任のもとで保険適用外の治療をなんでも保険診療と併用させようというもの。手順としては、(1)医師が診療計画書を策定し、(2)治療の必要性とリスクを書面で説明して患者の合意をとる、(3)患者が加入している健康保険に届け出を出して認められれば、極めて短時間で健康保険から保険外併用療養費の支給が受けられるようにするという。
だが、利用できる医療機関にも特段の基準もなく、これが現実のものとなれば、安全性・有効性も担保されていない治療や薬、あやしげな民間療法まで健康保険との併用が可能になってしまう。実質的な混合診療を認める内容で、国民が無用な健康被害に巻き込まれる可能性が出てくるのだ。
そのため、この荒唐無稽な規制改革会議の提案に対して、厚生労働省をはじめ、保険者3団体(健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、全国健康保険協会)、日本医師会などが反対の意を表明。さらに、規制改革会議が選択療養制度(仮称)創設の大義名分とした患者の代表である「一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)」からも、「難病患者の生命と健康に大きな被害が生じ」かねないと導入に反対の声明が出された。
多くの反対にあい、規制改革会議は、4月16日に、利用できる治療は、(1)国際的に認められたガイドラインに掲載されている、(2)一定レベルの学術誌に掲載された2編以上の論文がある、(3)倫理委員会の承認を得ている、のいずれかを満たすものという条件を追加。また、治療の妥当性の判断は「全国統一的な中立の専門家」に変更した。これにより、実施医療機関の限定はないものの、利用できる技術や薬は従来からある先進医療とほとんど変わらなくなり、いったいなんのための提案だったのかと疑問の声も上がっている。
2006年に導入された先進医療によって、いわゆる混合診療問題はすでに解決済みだ。それでも、幾度となく蒸し返されるのは、患者のためというよりも、岩盤規制の象徴とされてきた「混合診療の禁止」をくずすことで、規制改革会議の面子を保とうとしているだけのようにも見える。
患者不在の選択療養制度(仮称)の成立は、かぎりなくゼロに近い。
日本の医療制度では、評価の定まらない技術や薬による健康被害から国民を守るために、健康保険が使える「保険診療」と、評価の定まっていない「自由診療」を同時に行なうことを認めていない。これを破って、一連の治療のなかで自由診療を行なうと、本来なら保険診療が認められている検査や手術なども健康保険が適用されなくなり、患者は医療費を全額自己負担しなければならなくなる。いわゆる「混合診療の禁止」と呼ばれているものだ。
ただし、がんなどを患っていて保険診療では治らなかった患者のなかには、評価が定まっていなくても、新しい薬や治療法を試したいという人もいる。そうした患者の選択肢を増やすという名目で、2006年に新たに開始されたのが保険外併用療養費制度の「先進医療」で、法律では禁止されている混合診療を部分的に認めることになった。この場合、先進医療に係る費用のみが全額自己負担となる。
ただし、先進医療は、保険外の治療や薬をなんでも、保険診療と併用できるわけではない。先進医療で行なえる医療技術や使える薬はリスト化されており、実施できる医療機関にも条件がある。一定程度の安全性と有効性が期待される治療や薬のみを、厚生労働省のコントロール下で利用する仕組みになっている。それらの治療が先進医療で行なわれている間に、評価が定まって治療効果が立証されると、やがて健康保険が適用されて、だれでも使える治療として広まっていく。
これに対して、規制改革会議が提案した「選択療養制度(仮称)」は、医師と患者の間で契約が成立すれば、患者の自己責任のもとで保険適用外の治療をなんでも保険診療と併用させようというもの。手順としては、(1)医師が診療計画書を策定し、(2)治療の必要性とリスクを書面で説明して患者の合意をとる、(3)患者が加入している健康保険に届け出を出して認められれば、極めて短時間で健康保険から保険外併用療養費の支給が受けられるようにするという。
だが、利用できる医療機関にも特段の基準もなく、これが現実のものとなれば、安全性・有効性も担保されていない治療や薬、あやしげな民間療法まで健康保険との併用が可能になってしまう。実質的な混合診療を認める内容で、国民が無用な健康被害に巻き込まれる可能性が出てくるのだ。
そのため、この荒唐無稽な規制改革会議の提案に対して、厚生労働省をはじめ、保険者3団体(健康保険組合連合会、国民健康保険中央会、全国健康保険協会)、日本医師会などが反対の意を表明。さらに、規制改革会議が選択療養制度(仮称)創設の大義名分とした患者の代表である「一般社団法人日本難病・疾病団体協議会(JPA)」からも、「難病患者の生命と健康に大きな被害が生じ」かねないと導入に反対の声明が出された。
多くの反対にあい、規制改革会議は、4月16日に、利用できる治療は、(1)国際的に認められたガイドラインに掲載されている、(2)一定レベルの学術誌に掲載された2編以上の論文がある、(3)倫理委員会の承認を得ている、のいずれかを満たすものという条件を追加。また、治療の妥当性の判断は「全国統一的な中立の専門家」に変更した。これにより、実施医療機関の限定はないものの、利用できる技術や薬は従来からある先進医療とほとんど変わらなくなり、いったいなんのための提案だったのかと疑問の声も上がっている。
2006年に導入された先進医療によって、いわゆる混合診療問題はすでに解決済みだ。それでも、幾度となく蒸し返されるのは、患者のためというよりも、岩盤規制の象徴とされてきた「混合診療の禁止」をくずすことで、規制改革会議の面子を保とうとしているだけのようにも見える。
患者不在の選択療養制度(仮称)の成立は、かぎりなくゼロに近い。