日本からはるか1万キロ。北アフリカのモロッコ王国で古くから伝わる調味料「塩レモン」が、日本で新たな食ブームの立役者となっている。

 塩レモンは、レモンを塩漬けにして発酵させた香り調味料で、傷みやすいレモンを大切に使うモロッコ人の知恵から生まれたものだ。モロッコ料理は、パプリカ、ターメリック、シナモンなどのスパイスをふんだんに使うのが特徴。この複雑なスパイスを引き立たせるのが、ほどよい酸味の塩レモンだ。モロッコ料理には欠かせない香り調味料として、タジン鍋はもちろん、肉料理や魚料理、サラダまで幅広く使われている。

 本場モロッコではレモンを丸ごと塩に漬け込み、時間をかけて発酵させるが、日本では櫛切りや輪切りにしたレモンを塩で漬け込む方法で作る人が多いようだ。作り方は簡単で、適当な大きさに切ったレモンと塩(レモンの重量の10%程度)を殺菌した広口瓶などに入れ、冷暗所で保存。1か月ほど熟成させると使えるようになるが、長くおくとさらに味がなじんでまろやかになるという。

 さわやかなレモンの香りとコクのある塩味は、料理に酸味と塩味を加えたいときに便利で、和食のちょい足し調味料としても相性はいい。レモンから出てきたエキスをドレッシングや肉や魚のつけ汁に使ったり、レモンの皮は刻んだり、すりつぶしたり、多様な使い方ができる。テレビや雑誌で紹介され、その後、ネットのレシピサイトで拡散されるようになったのだ。

 はるかマグリブの地からやってきた「塩レモン」は、食べるラー油や塩麹のように、一大ブームを巻き起こすのか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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