経団連が中断していた政治献金への関与を5年ぶりに再開する。その狙いは、米倉弘昌(ひろまさ)前会長時代にギクシャクした安倍自民党政権との関係を改善し、政策への影響力を強めることにあり、6月に就任した榊原定征(さかきばら・さだゆき)会長は、「経済再生へ経済と政治は車の両輪。徹底的に手をつないで日本を立て直さなくてはいけない」と強調する。

 具体的には、加盟企業(約1300)に対する「献金の呼びかけ方式」にし、実際に献金するかどうかは各社の判断に委ねる。経団連は1993年まで業界団体や企業ごとに献金を割り振った「あっせん方式」をとっていたが、これはとらない。1990年代初めには100億円程度あった自民党への企業・団体献金は2012年には約14億円まで落ち込んでいる。

 献金関与の再開を巡っては「政策を金で買うのか」という批判がある。安倍政権は経団連が求めていた法人税率引き下げや環太平洋パートナーシップ協定(TPP)、労働規制緩和を積極的に進めているが、そうした対応への「お礼のメッセージじゃないか」との指摘もある。

 これに対し野党は「実質賃金はマイナスが続いている。政治献金するお金があれば賃金を上げろ、非正規の人たちを正規雇用にしろ、と言いたい」(海江田万里民主党代表)、「金で政治を動かすのは前近代的な政治だ」(橋下徹日本維新の会代表)と批判する。そもそも政党助成金の導入が決まったとき(1994年)、企業・団体献金は経済界も含めて廃止の機運が高まっていたはずだ。

 「政治とカネ」。かつては新聞の紙面を多くにぎわせた言葉だが、そのあり方が改めて問われそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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