大ヒットしたゲームやアニメは、子どもたちの日常会話にも変化を及ぼす。『クレヨンしんちゃん』のブームのときは、しんちゃんの生意気な口調を真似る子が続出し、作品自体が批判される憂き目にあった。いま、少年少女たちの会話の語尾には、甲州弁や静岡弁などであるところの「~ずら」がよく登場する。これは話題の『妖怪ウォッチ』に登場する狛犬の妖怪、「コマさん」の真似だ。コマさんは、デザインもかわいらしいが、木訥としたしゃべり方にも人気がある。

 「~ずら」と並んで、コマさんを特徴づける台詞回しが「もんげー」。岡山弁で「ものすごい」という意味だ。2014年9月16日には、岡山県の伊原木隆太(いばらぎ・りゅうた)知事が新しい県のキャッチフレーズに「もんげー岡山」を採用したと発表。インターネットによる投票で決まったものだが、明らかにコマさん人気が影響しているのだろう。もともと「もんげー」は当の岡山でもあまり使われなくなっている方言で、「復権」といえそうだ。

 この「もんげー」と「~ずら」とは、本来話されている地域が違うのもポイント。コマさんは漠とした「田舎」、古き良き時代の地方を象徴するキャラクターといえる。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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