「東京オリンピックの観戦チケットが手に入る」
 「五輪の競技場建設をする会社の社債に当選しました」

 2020年の夏季オリンピックの開催が東京に決まった昨年9月以降、高齢者を狙ったオリンピック便乗詐欺の相談が国民生活センターや消費者庁に寄せられている。

 詐欺事例のひとつは、金の投資商品を購入すると、オリンピックキャンペーンとして先着100名に五輪の記念金貨をプレゼントするというもの。「日本貴金属協会」を名乗る団体からのパンフレットを受け取ったAさん(80代・男性)は、それを信じて現金500万円を添えて申込書を郵送。しかし、いつまでたっても配当金や記念金貨が届かず、騙されていることに気づいたという。

 この事例では、協会職員や報道機関の記者を名乗る者が電話をしてきて、「日本貴金属協会」が信頼できる団体だと信じ込ませる劇場型の勧誘が行なわれている。しかし、「日本貴金属協会」なる団体は架空のもので、消費者庁は市民に詐欺に遭わないように注意を呼びかけている。

 この事例のほかにも、「東京オリンピックで株価が上がるから」「オリンピック関連企業が発行する社債を買う権利が抽選で当たりました」と投資資金を振り込ませるなどの手口もある。また、「オリンピック関連企業への投資を募集するパンフレットが全国500名限定で送付される。届いたら権利を譲ってほしい。パンフレット到着後に電話をくれたら、オリンピックの入場券をプレゼントする」といった意味不明な電話もかかってきているという。

 オリンピックに限らず、これまでもサッカーワールドカップ、iPS細胞、自然エネルギーなど、その時々で話題になっているニュースを悪用する詐欺は行なわれており、2020年のオリンピック開催が近づくと被害件数が増加することも心配されている。

 「自分だけは詐欺に遭わない」と思っていても、先の事例のように複数の人物が登場するなど手口が巧妙になっている。いったんお金を払ってしまうと、取り戻すのは難しいので、うまい話ほど慎重に対応したい。

 怪しいと思ったら、自分ひとりで答えを出さずに、まずは最寄りの消費生活センターや警察などに相談してみよう。とくに、ひとり暮らしの高齢者が詐欺に遭うケースが報告されているので、子どもや周囲の人々も目配りをしてあげたいものだ。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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