著名人につきまとう輩を指す「スターストーカー」という言葉。もちろん、仕事先やプライベートな場所に近づいてくる実際のストーキング行為に用いることもある。しかしもっぱら、SNSやブログなどに執拗な書き込みをしてくる「ファン」を称することが多い。

 ネットの時代、スターは決して「雲の上の存在」ではない。タレントがパーソナルな感情を投稿すると、ファンがこぞって応援コメントを残してくれる。そうした健康的な交流を皆が築いていけるならすばらしい。が、距離感が縮まっていることで生まれる危険性も否めない。あまたのファンの中で、自分の発言だけは特別だと思ってほしい。それは熱心なファンの本音のはずだ(このところを否定するのはおそらく正しくない。タレントは、自分がファンにとっては「ファンタジー」であることを理解しておく必要がある)。あふれすぎた愛情は、バランスを失うとマイナスにも容易に転化する。ツイッターは匿名性が強く、攻撃的になりやすいといった性質が、これを後押しする。

 しつこい「批判」に恐怖を感じてブロックしたとしても、「自分の声をなぜ聞き入れてくれないのか」と相手が逆上する例もある。なにせ、芸能人はスケジュールなどがおおやけになりやすいのだ。「死ね」といった心ない言葉でも、現実の襲撃の可能性として警戒しないわけにいかない。いま、スターたちのネットとのあるべきつきあい方が模索されている。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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