1月3日、TBS系で放送された『独占!長嶋茂雄の真実』が大きな話題になっている。長嶋といえば1957(昭和32)年に巨人軍に入団以来、日本野球界を王貞治と共に牽引してきた大ヒーローだが、その人気は現役を引退しても衰えることがなかった。

 その長嶋が脳梗塞で倒れたのは2004年3月4日。医者もさじを投げるほどの深刻な病状だったが、奇跡的に回復した。だが重度の言語障害と右半身マヒが残り、歩くことさえ困難ではないかといわれた。

 しかし長嶋の不屈の精神は、老いを迎えても病に挫けることはなかった。番組の中で長嶋は「それじゃあ病気と勝負しようと思いました」と語っている。

 週4回のリハビリはトレーニングといえるほどハードなものだ。マヒが残る右手一本での腕立て伏せなど見ているこちらが辛くなるほど過酷だが、長嶋は挑戦し続ける。

 「落ち込まない。前に出るという気持ち」「もう一度走りたいと思っている」

 リハビリを見ている教え子の松井秀喜の表情が曇るが、長嶋の表情は明るく屈託がない。

 倒れてから10年が過ぎ、右半身のマヒは残り、以前のように流ちょうに話すことはできないが、78歳とは思えない顔の艶とカッコイイ姿勢は変わらない。

 長嶋は人生で二度ヒーローになったのだ。一度は全野球ファンの憧れとして、二度目は老いや病に苦しむ人たちに勇気を与えてくれる存在として。

 番組では次女の三奈と仲良く阿川佐和子のインタビューに答えていたが、家庭人としての長嶋は、野球人長嶋のように順風満帆ではなかった

 『週刊文春』(1/15号、以下『文春』)は、この番組で長男の一茂について触れられなかった理由について報じている。

 以前は長嶋のスケジュールなどは一茂の妻が社長を務める「ナガシマ企画」が取り仕切っていたが、一茂が父親の記念品や愛用品を売り飛ばしたことが発覚して、二人の間に亀裂が生じてしまった。そのため、いまは三奈が代表を務める「オフィスエヌ」が仕事や資産を管理している。

 先の件で三奈と一茂の仲もこじれて修復できない状態にあると『文春』は書いている。

 そんなこんながあって、巨人の球団代表特別補佐だった一茂が野球解説をしている日テレではなく、熱心にオファーを出していたTBSに三奈が決めたようだ。

 長嶋にはほかに長女と次男がいるが、長女は結婚して家を出ているらしく、全くメディアには出てこない。

 次男は長嶋から聞いた話では、運動神経なら一茂以上だが、背が高くないのと動体視力にやや問題があるので、野球選手にするのは諦めたそうだ。

 雑誌の対談でゴルフのジャンボ尾崎と対談をしてもらったとき、長嶋が尾崎に「ゴルファーにしたいのだが」と相談したことがあった。長嶋も子を持つ親なんだなと思ったが、その後、息子はF1レーサーを目指しているという話は聞いたが、ゴルファーという噂は聞いたことがない。

 長嶋家最大の謎は、東京五輪のコンパニオンだったとき知り合い、わずか3か月の交際で電撃結婚した亜希子夫人と長嶋の夫婦関係であろう。長嶋が家で倒れたとき、もっと早く発見して入院させていれば、ここまで重症化することはなかったという医者が多くいた。

 夫人とは別居していたと報じたのは『文春』(2007年3/1号)だった。亜希子夫人の友人はこう話している。

 「亜希子さんは(長嶋が倒れる約1年前の)03年1月にバリアフリーのマンションを買い、そこで暮らしていました」

 理由は、彼女には膠原病の持病があり、広くて階段のある田園調布の豪邸で生活するよりマンションのほうが便利で病院にも近いということだったようだが、それだけだったのかという噂は消えることがなかった。亜希子夫人は2007年9月18日、64歳の若さで亡くなってしまうのである。

 長嶋の太陽のような表情のうちに秘められた悲しみの色を見るのは、私だけだろうか。

 いまでも思い出す長嶋の姿がある。74年10月14日、後楽園球場。私はバックネット裏から双眼鏡で長嶋の姿をじっと見ていた。入団以来憧れ続けてきた長嶋の引退式。

 数か月前、『週刊現代』編集部の先輩にかかってきた長嶋からの電話に偶然出た私は、思わず「長嶋さん、やめないでください」と叫んで編集部中の顰蹙(ひんしゅく)を買った。

 試合が終わり、長嶋がピッチャーズマウンドに置かれたマイクに歩み寄る。双眼鏡が涙で曇り長嶋の姿がぼやけて見える。「巨人軍は永久に不滅です」。そう言い終えてグラウンドを一周する長嶋がときどき立ち止まり、ハンケチで涙を拭う。

 記者会見にも出たが、長嶋の顔を見て泣いているだけだった。あの日から40年以上が経つが、あの日の青空と長嶋の後ろ姿をはっきりと覚えている。かつての野球少年にとっていつまでも「長嶋は永久に不滅」なのである。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 新年早々フランスの新聞社がテロリストの標的になる事件が起き、波乱の予感を感じさせる未年である。景気の先行き、テロ事件、天変地異、不安要素はたくさんあるが、長嶋茂雄のように前向きに生きていきたいものです。今週はスキャンダル3本立て

第1位 「オリコン1位アイドル『仮面女子』の性接待」(『週刊文春』1/15号)
第2位 「22歳『大和なでしこ』を1ヵ月も監禁暴行した『インド人』の無法地帯」(『週刊新潮』1/15号)
第3位 「氷の炎上 安藤美姫に元婚約者父が『きちんと説明して』」(『週刊文春』1/15号)

 第3位。年末年始のテレビに出まくっていた元フィギアスケーター安藤美姫(27)だが、彼女は自分が思っているほど“人気”があるわけではないようだ。
 その理由は、新しい恋人のフィギュアスケーター、スペインのフェルナンデスを公表したことと、元日にインスタグラムに投稿した愛娘と彼との3ショット写真だと『文春』は書いている。
 要は、テレビが起用しているのは彼女の「スキャンダル」がいまのところ賞味期限内であるからだというのだ。
 「正月が終われば減るはず」(放送作家)だというが、さらに不可思議なのは、彼女が一時、一緒に暮らしていた元フィギュアスケーターの南里康晴(29)との仲はどうなったのかということだ。
 南里はメディアから追いかけられたとき、赤ん坊の父親は私ではないと言いきっていたから、本当の父親が誰かは知っていたに違いない。知っていながら彼女をかばっていたのだから、近い将来結婚するものと周囲も南里の親も思っていたに違いない。
 “糟糠”の彼氏をあっさり捨てて外国男に走るなんざあ、大和撫子のやることじゃあるまい。南里の父親がこう話す。

 「ひとつのステップにケジメをつける前に次のステップにっていうのは都合が良すぎる。次の人と幸せになりたいんだったら、ちゃんと説明せんと。雲隠れしているならともかく、あんなに自分から表に出てきているのに何にも無しってのは大人としてダメでしょうが」

 その通り。今度は南里の衝撃告白が『文春』に載るかもしれない。

 第2位。年明けの1月2日、インド東部のコルカタで起きた日本人レイプ事件は、大きな衝撃を与えた。
 『新潮』によれば、被害者は22歳の女性で、昨年11月20日にコルカタを訪れ、日本語で話しかけてきた旅行ガイドを装ったインド人たちと知り合った。
 彼らは北部のブッダガヤなどに彼女を連れて行き、1か月近くにわたって監禁して集団レイプをしていたのだ。
 犯人は5人。現金約14万円も奪っている。その村では「外国人が来ている」と噂になっていたらしいが、誰も助けに来てくれはしなかった。
 彼女の容体が悪くなったので医者に診てもらうために犯人が連れ出したところ、隙を見て逃げ出し、警察に話して事件となった。
 痛ましい事件だが、地元では「日本の女性は詐欺師のカモ」だと言われているぐらい、多くの日本人女性が彼らの毒牙にかかっているようだ。
 インド在住のジャーナリストがこう語る。

 「インドではほぼ毎日、レイプに関する報道があると言っても過言ではない。その中には、外国人が餌食になる例も少なくない。2013年3月には、夫と一緒に自転車で旅行していたスイス人の女性が集団レイプされるという事件もあった。また、警察官が警察署内で女性をレイプするなど、警察機能が欠落した地域も多く存在しているのです」

 この背景にはカースト制度と根強い女性蔑視の風潮があると『新潮』は指摘する。
 いまでもインドでは夫に先立たれた女性が再婚することは許されない。私は明るくて歌とダンスのすばらしいインド映画が好きだが、こうした現実を知ると、いままでのように無邪気に見てはいられなくなる。
 インドにも第2、第3のマララさんの出現が待たれる。

 第1位。私はまったく知らないが、秋葉原・万世橋のたもとにアイドルグループ「仮面女子」の常設館があるという。
 写真を見ると仮面をかぶったAKB48のようである。今年元旦に発売されたCD『元気種☆』はインディーズレーベルながら予約販売枚数が13万枚を超え、週間オリコンチャートの第1位に輝いたという。
 AKB48もそうだが、こうした若い娘たちを使って稼ごうとする人間のなかには、しばしば彼女たちの性を食いものにしようとする輩がいるものである。
 『文春』によると、ここの池田せいじ社長(37)もその一人だという。彼は新宿や大阪でホストクラブを立ち上げたが、スキャンダルが相次ぎ、芸能事務所の運営をするようになったそうだ。
 今回、社長に肉体関係を迫られ、仕方なく結んだと告白しているのは現役、元メンバーの4人の女の子たちだ。生々しい性接待の実態は『文春』を読んでいただくとして、興味深いのはこうしたグループを無批判に取り上げ、人気グループに押し上げてしまうメディア側の問題が提起されていることである。
 NHKは2013年6月21日に『ドキュメント72時間「“地下アイドル”の青春」』を放送して彼女たちの知名度を全国的にしてしまうのである。
 だが、ここで描かれている「貧乏生活」は社長からの指示で“やらせ”だったというのだ。六畳間に4人が共同生活を送り、自炊をしながら成功を夢見て暮らすというお決まりのパターン。
 告白によると、彼女たちは自炊などせず、元コックのマネジャーがいて寿司や中華をつくってくれる。メンバーのほとんどが実家暮らし。月収1万円もウソで月平均10万円、高い子は20万円はあるという。
 おまけに脱退すると言うと、違約金として中には数百万円を要求されることもあるというのだ。
 ほかに騙されたのは『スーパーJチャンネル』(テレビ朝日系)、『Nスタ』(TBS系)、『有吉ジャポン』(TBS系)などなど。
 テレビ局に取材力を求めること自体無理なことは承知だが、これでは佐村河内守(さむらごうち・まもる)事件と変わらないではないか。
 池田社長は取材に対して、性接待もやらせも否定。違約金の件だけはノーコメント。
 現役や元メンバーの訴えをファンたちはどう聞くのだろう。もはやこれまで同様に無邪気に聞く気にはなれないはずだと思うが、いまのガキたちは「そんなことはこの世界では当たり前じゃん」と歯牙にもかけないのかもしれない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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