2014年に流行語化した「壁ドン」。以前に『旬wordウォッチ』でも取り上げているが、恋愛ものの少女漫画をよく読んでいる方ならば「いろんな作品にやたらと出てくる」、確かに「流行っていた」と感じたことだろう。ただ、トレンドだから「壁ドン」のシーンが登場するというよりも、ラブストーリーのニーズにのっとった「あるある」。二人称が「おまえ」のイケメンが登場する作品ならば、展開上「壁ドン」を出さないのはかえって困難である。このような、女心をくすぐるイケメンの行動は枚挙にいとまがない。

 雑誌『週刊SPA!』(扶桑社)の2014年12月23日号では、壁ドンの次に来る!として「肩ズン」を紹介した。「肩ズン」は、女性の肩に男性が頭をあずけて、「疲れた~」などと弱音を吐く様子を指している。この記事での心理カウンセラー・小高千枝氏の解説によれば、基本的に自分を守ってくれる男性が、自分の前でだけ弱い姿を見せるところが、擁護欲、あるいは「必要とされたい」という承認欲求につながるのだという。なるほど、漫画などでもよく見かける次のような展開だ。まずは「壁ドン」の洗礼を受け、恋愛感情が進行したところで、それまでツンツンしていた男が「肩ズン」などで弱さを見せる。それが恋の決定打になる……。

 最近は少女漫画の映画化が多く、しかもなかなかの集客を見せている。もちろん、漫画的展開は絵空事である。だが、少年向けの作品とはまた違ったリアルさが存在する。たとえ高校生の恋愛を描いた作品であっても、男性諸氏が作品から学ぶべきところはあるだろう。女性が男性に何を求めているか、ということだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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