「にしきぎ」は、花鰹(はながつお)、山葵(わさび)、もみ海苔を、たまりで和えたつまみもの。気が置けない料理屋で注文した料理の前に出す酒の肴として、あるいは、料理に通じた人のごはんのお供として、梅雨の不快な季節のここ一番というときにこそ、重宝がられる料理である。
作り方は、まず、上等の鰹節をできるだけ薄く削る。そして、山葵はつんと香りがたって、食感がねっとりとなるように、太めのものを選び、細かなおろし金で、気長に、密におろす。そうしたら、山葵を多めにして花鰹とともにたまりをかけてざっくりとまぶす。お好みで、もみ海苔をかけたり、大根おろしを合わせたりすれば、できあがり。箸の先に少しずつとって舐めるように、山葵の刺激に涙しながらごはんを食べる。これがうまい。
湿気っぽくて暑い京都の梅雨には、食欲が出なくても箸が進むような料理や、使いかけた乾物の湯葉や麩などを上手に使い切るための献立が欠かせない。「にしきぎ」も梅雨ならではの一品として、これまでいろんな食通たちが楽しんできた料理である。例えば、陶芸家で美食家としても名高い北大路魯山人は、1931年に書かれたエッセー「夏日小味」で、「上等のかつおぶしの中心である赤身ばかりを薄く削ること」と調理のコツを書き表している。また、京おんなの随筆家、大村しげは、朝日新聞京都支局の臨時職員として働いていた1964年ごろ、「おばんざい」の連載企画で執筆を担当し、「本ぶしの真ん中を、電気の球のかけらで軽う軽う、すーっとけずる」と、薄い削り方のコツを語っている。
少し残して茶漬けにすると、これがまたおしいいのである。
作り方は、まず、上等の鰹節をできるだけ薄く削る。そして、山葵はつんと香りがたって、食感がねっとりとなるように、太めのものを選び、細かなおろし金で、気長に、密におろす。そうしたら、山葵を多めにして花鰹とともにたまりをかけてざっくりとまぶす。お好みで、もみ海苔をかけたり、大根おろしを合わせたりすれば、できあがり。箸の先に少しずつとって舐めるように、山葵の刺激に涙しながらごはんを食べる。これがうまい。
湿気っぽくて暑い京都の梅雨には、食欲が出なくても箸が進むような料理や、使いかけた乾物の湯葉や麩などを上手に使い切るための献立が欠かせない。「にしきぎ」も梅雨ならではの一品として、これまでいろんな食通たちが楽しんできた料理である。例えば、陶芸家で美食家としても名高い北大路魯山人は、1931年に書かれたエッセー「夏日小味」で、「上等のかつおぶしの中心である赤身ばかりを薄く削ること」と調理のコツを書き表している。また、京おんなの随筆家、大村しげは、朝日新聞京都支局の臨時職員として働いていた1964年ごろ、「おばんざい」の連載企画で執筆を担当し、「本ぶしの真ん中を、電気の球のかけらで軽う軽う、すーっとけずる」と、薄い削り方のコツを語っている。
少し残して茶漬けにすると、これがまたおしいいのである。