文部科学省が2015年6月、全国の国立大学に対し、文系学部の廃止や他分野への転換を求める通知を出したことが大きな議論を呼んでいる。

 通知を読んで大学関係者が目をむいたのは、組織見直しの章でこんな一文があったことだ。

 「特に教員養成系学部・大学院、人文社会科学系学部・大学院については、18歳人口の減少や人材需要、教育研究水準の確保、国立大学としての役割等を踏まえた組織見直し計画を策定し、組織の廃止や社会的要請の高い分野への転換に積極的に取り組むよう努めることとする」

 ズバリ言うと、文系学部の改廃を求めたのだ。教員養成系学部の組織改廃の背景には少子化の進展があるのはいうまでもない。学校の生徒数が激減したからだ。ただ、法律、経済、文学など人文社会科学系も改廃の対象にしたことについては、国立大学側から「幅広い教養と専門知識を備えた人材を育てるためには人文社会系を失ってはならない」(山極寿一京都大学総長)、「非常に短期の成果を上げる方向に性急になりすぎていないか。大学では今すぐ役に立たなくても、将来大きく展開できる人材をつくることも必要だ」(里見進東北大学総長・国立大学協会会長)などと反発の声が出ている。

 文系学部については経済界から「文系出身者はスキルがなく使えない」ため、組織改変の要望が出ているという。これには「経済界の論理だけで大学の組織改編を迫られるのは納得できない」との声も。

 大学側も自らの教育内容を見直し、優秀な学生を育成する必要があるのは当然だ。

 このほか通知では国立大学に支給する運営費交付金をメリハリをもって重点配分するために、大学の役割を3分類することを提示した。その3つとは(1)全学的に海外の大学と伍して世界で卓越した教育研究を推進する大学、(2)専門分野で強み、特色を持ち、全国的、世界的な教育研究を進める大学、(3)地域活性化、地域貢献の中核となる大学。

 こちらも結果として大学を一軍、二軍、三軍に格付けし、お金を配分するような気がしてならない。大学間の競争も激化しそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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