「お尻」のことを京都弁で「おいど」という。「おいどかけ」のような使い方もあり、これは着物の裾を短くして歩きやすくした「裾からげ」のことである。たくし上げた裾を抱え帯で締め、裾の長さを調整することを表している。
「おいど」は御所ことばの一種で、漢字では「御居処」と書く。昔は「居るところ」や「座るところ」という意味で使われていた。それがいつしか「お尻」という意味に変化し、さらに「おいどが重い」といったら、動作ののろい人を表すようになり、また、なにかの競争をしている場面であれば、「どんけつ」を意味することばになった。
御所ことばは暮らしの中にもたくさん残っていて、例えば、醤油のことを「おしたじ」や「おしょい」と言ったり、お湯やお茶を「おぶ」と呼んだりする。また、来客を出迎えるときは「おこしやす」、帰るときには「おやかまっさんどした」という。これは「お邪魔しました」と同じようなことばだ。本来は複雑な上下関係や微妙な感情によって使い分けるものであるのだが、現代では、どこか愛らしい音に惹かれて使われているような点も否めない。
京都のことばには、御所ことばに由来する接頭敬辞の「お(御)」、接尾敬辞の「さん」を付けることばが非常に多い。そのうえ、似たような庶民流儀の使い方もある。食品の呼称はその典型で、「おまめさん(だいず)」とか、「おだい(大根)」、「おたまさん(玉子)」など、本当にいろいろな呼称が使い続けられている。また、太陽を「にちりんさん」、月を「まんまんさん(仏様の意味で使われていることが多い)」といったり、比叡山から吹き下ろす風を「ひえーさん」といったりもする。自然崇拝というと大げさであるけれど、このような日常的なことばには、自然や食べ物を尊ぶ心が身近に感じられて心地よいものである。
下鴨神社・糺ノ森で、平安期に神事が行なわれていた奈良殿神庭の周辺。
「おいど」は御所ことばの一種で、漢字では「御居処」と書く。昔は「居るところ」や「座るところ」という意味で使われていた。それがいつしか「お尻」という意味に変化し、さらに「おいどが重い」といったら、動作ののろい人を表すようになり、また、なにかの競争をしている場面であれば、「どんけつ」を意味することばになった。
御所ことばは暮らしの中にもたくさん残っていて、例えば、醤油のことを「おしたじ」や「おしょい」と言ったり、お湯やお茶を「おぶ」と呼んだりする。また、来客を出迎えるときは「おこしやす」、帰るときには「おやかまっさんどした」という。これは「お邪魔しました」と同じようなことばだ。本来は複雑な上下関係や微妙な感情によって使い分けるものであるのだが、現代では、どこか愛らしい音に惹かれて使われているような点も否めない。
京都のことばには、御所ことばに由来する接頭敬辞の「お(御)」、接尾敬辞の「さん」を付けることばが非常に多い。そのうえ、似たような庶民流儀の使い方もある。食品の呼称はその典型で、「おまめさん(だいず)」とか、「おだい(大根)」、「おたまさん(玉子)」など、本当にいろいろな呼称が使い続けられている。また、太陽を「にちりんさん」、月を「まんまんさん(仏様の意味で使われていることが多い)」といったり、比叡山から吹き下ろす風を「ひえーさん」といったりもする。自然崇拝というと大げさであるけれど、このような日常的なことばには、自然や食べ物を尊ぶ心が身近に感じられて心地よいものである。
下鴨神社・糺ノ森で、平安期に神事が行なわれていた奈良殿神庭の周辺。