これはNPO法人ほっとプラス代表理事、1982年生まれの藤田孝典氏がつくった言葉である。下流老人の定義は「生活保護基準相当で暮らす高齢者およびその恐れがある高齢者」。彼が出した『下流老人~一億総老後崩壊の衝撃』(朝日新書)は10万部を超えるベストセラーになっている。

 この本を読んで驚くのは、現在非正規労働者の若者はもちろんだが、40代で年収500万円以上あるサラリーマンでも下流老人になる確率が高いということである。

 総務省の調べでは高齢者夫婦の1か月の最低生活費は社会保険料込みで約27万円かかるそうだ。だが、それを全部年金で賄うことはできないから毎月貯金した分から補填していくと、高齢者世帯の平均貯蓄額(約1268万円といわれる)あったとしても安心できる額ではないという。それに病気、熟年離婚でもすればあっという間に下流老人の仲間入りするのは間違いない。

 高齢世帯の相対的貧困率(国民所得の中央値の半分に満たない人の割合)は22%。これが「お一人様」になると年金が減るから、男性が38.3%、女性は52.3%と急上昇するのだ。

 下流老人たちが最後の拠り所にするセーフティネットは「生活保護」だが、申請しなければもらえないということや、世間体が悪いなどと申請せず餓死してしまうケースも後を絶たない。

 さらに自民党は前回の総選挙で生活保護基準を10%引き下げると公約し、実施され始めているから、ますます憲法で保障されている「健康で文化的」な最低限の暮らしをすることなど夢のまた夢である。

 藤田氏はこのままいけば「一億総下流時代」が必ず到来すると言っている。そのトリガーとなるのが再予定されている消費税10%だと『週刊ポスト』(9/4号、以下『ポスト』)が警鐘を鳴らしている。

 厚労省は5年に1度、年金財政を検証し公表している。昨年6月に出されたものをもとに『ポスト』がシミュレーションしたところ、平均月給45万円の50歳のサラリーマン(60歳定年まで働き、妻は専業主婦)の場合、65歳の年金支給額が月20万4000円。70歳で19万円、75歳で17万4000円、80歳で15万8000円と減らされるのである。長生きはするなといわんばかりではないか。

 『ポスト』によれば、消費税が10%に引き上げられると、年収300万円未満の世帯でも年9万5882円の負担増になるとみずほ総研が試算しているという。下流老人層には死活問題である。

 それでなくてもアベノミクスの円安のせいで、食品などの輸入原材料も軒並み値上がりしている。さらにそこに消費税アップ時の便乗値上げがあれば、下流老人予備軍が真性・下流老人になって貧困層を拡大することは間違いない。

 下流老人半歩手前の私も、この問題に無関心ではいられない。埼玉県さいたま市にある「ほっとプラス」を訪ね藤田氏に話を聞きに行ってきた。

 小柄だが明るくはっきりした話し方をする素敵な若者である。彼は、貧困は自己責任ではなく、いまの社会構造が必然的に生み出しているものだから、生活保護をもらうのを躊躇することはない、「社会保障を受けることは権利です」と言い切る。

 申請主義を止めることはもちろんのこと、生活保護を「救貧対策」ではなく「防貧対策」に使うべきだと主張する。

 いまの制度では完全におカネが底をつき、にっちもさっちもいかなくならなければ支給されない。だがそうなった人は、すでにうつ病などの症状が出ているか重篤な病気にかかっているケースが多く、働くことができないのはもちろんのこと即入院・治療となってしまう。

 病気予防のように、そうならない前に下流老人たちを捕捉して救わなければいけないはずなのに、そうなっていないのはおかしい。まことにもっともな意見である。

 ちなみに貧困者の捕捉率(生活保護有資格者のうち現利用者の割合)は、日本は15~18%程度だが、ドイツは64.6%、フランス91.6%もあるそうだ(2010年)。それは社会保障政策がきめ細かく行なわれていることの証左である。

 日本は家賃にかかる割合が欧米などと比べても大きく、年金の半分が家賃に消えてしまうという高齢者が多い。ヨーロッパ各国では少子化や人口減少対策として民間借家への家賃補助制度や公立住宅の建設を増やすことなど、住宅政策を転換したことで効果を上げているという。日本も早急にそうするべきである。

 このままいけば日本の年金制度は5年、10年後には必ず破綻する。したがって若者に無理矢理年金を払わせるのではなく、貧困対策基本法を作り国民の防貧や救貧対策を国家戦略として強化するべきだ。フランスの経済学者ピケティの言うように、一部の富裕層から徴収して再配分するなど、社会保障を手厚くしていくことこそが喫緊の課題だと藤田氏は続けた。

 消費税を8%に上げるときは、そのほとんどを福祉の充実に使うと公約したはずではないか。それがゼネコンや株式市場に湯水の如くカネを垂れ流し、福祉はやせ細っていく一方である。そんな政治家どもを信用できるはずがない。

 私は藤田氏に、ここまできたら「困民党」という政党をつくって、あなたが平成の大塩平八郎になりなさいと言ったが、これは冗談ではない。

 国民の命を守ると言いながら戦争のできる国にしようとしている安倍政権の考え方は根本的に間違っている。国民の命は充実した社会保障制度で守られるべきで、それを蔑ろにする人間に、われわれの命を託すわけにはいかない。いまこそ老人と若者が手を結び、貧者の、貧者による、貧者のための政党ができたら第1党間違いなしだと思うのだが。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 五輪エンブレム「盗作問題」はようやく大会組織委員会が使用を中止して決着した。佐野研二郎氏には気の毒だが、彼のデザインには独創性がないことが明らかになったのだから仕方あるまい。今週の週刊誌はおもしろい記事が揃った。議員の買春疑惑から安倍首相夫人の「メロメロ現場」まで、じっくりお読みいただきたい。

第1位 「1回2万円“未成年買春”相手が告白『武藤貴也議員は議員宿舎で僕19歳を奴隷にした』」(『週刊文春』9/3号)
第2位 「昭恵さん布袋寅泰と深夜2時 酔って、唇、しなだれて」(『女性セブン』9/10号)
第3位 「愛之助と藤原紀香 信じられない濃厚ラブ写真」(『フライデー』9/11号)

 第3位。今週はしばらくぶりに『フライデー』。藤原紀香(44)と歌舞伎役者・片岡愛之助(43)のラブラブ、ベタベタ写真である。
 8月下旬、夕方5時過ぎに赤坂のエステサロン「ミス・パリ」に入った紀香だが、なかなか出てこない。
 3時間半後、出てきた紀香をピックアップした愛之助は、

 「そのまま四ツ谷駅近くの住宅街まで車を走らせた。コインパーキングに停車すると、二人はそろって車から降り、歩き始める。なんと手をガッチリつなぎながら!
 紀香はよほど気分がいいのか、大声でハシャぎ、高い笑い声が住宅街に響く。(中略)
 『二人はいまやほぼ同棲状態ですよ』
と話すのは、舞台関係者だ。
 『紀香との“浮気”報道を受け、愛之助は必死に『彼女とは友達だ』と言いわけしていましたが、二人がつき合っていることはバレバレでしたね。というのも、愛之助は仕事が終わると、常宿のホテルにはほとんど帰らず、紀香のマンション方面へ戻っていくので(笑)。現在は紀香の家で一緒に暮らしているそうです』(舞台関係者)」

 たしかに見事に二人のラブラブな様子がよく撮れている。だが、とジーッと見ながら考えた。写真誌は芸能人のツーショット写真で存在感を増し、部数を増やしてきた。『フライデー』は中でも芸能物が強かった。
 だが、中川郁子(ゆうこ)の「路チュー」写真、小泉進次郎、額賀福志郎の恋人との一泊現場写真を見てきた目には、紀香と愛之助のツーショット写真はインパクトが著しく低いのだ。
 二人との合意の上だとは言わないが、予定調和という感じがしてならない。
 写真誌に「ごたく」はいらない。権力者たちを震え上がらせる決定的現場写真を撮るにはどうしたらいいのか。どうしたらそうした情報が入る態勢がつくれるのかを、『新潮』や『文春』の写真を見て考えてほしいと思う。

 第2位。このところのスキャンダル続発に、さぞかし安倍首相は怒り心頭だろうと多少同情していたところに、今度は『女性セブン』が奥方・昭恵さんの「ご乱行」を報じたのだから、安倍さんの持病は悪くなるばかりであろう。
 舞台は南青山にある会員制バー。8月下旬のある夜、安倍昭恵(あきえ)さん(53)が仕事関係の人たちと教育関係の話をしていたという。
 だが、そこにいた常連客が見た彼女の飲みっぷりがスゴイ。

 「赤ワインにシャンパンと、ハイペースで飲んでいました。1時間もすると目がトロンとしちゃって、もうベロンベロン。そのうち同席していた人と話もせずに、携帯をいじり始めたんです」

 日付が変わっていたそうだ。携帯で話を終えた昭恵さんが「呼んじゃった!」と店内に響く声で嬉しそうに告げたという。そして10分後。黒のジャケットにジーンズ姿の男性が颯爽と現れたそうだ。
 布袋寅泰(ほてい・ともやす、53)だった。ヌノブクロじゃない布袋は、昭恵さんが大のファンでライブには必ず足を運んでいるという。
 すぐさま昭恵さんは布袋の隣へ移ると、しばらくぶりに恋人と再会したかの如く話し始めたという。

 「布袋さんにしなだれかかるように寄りかかっていたところまでは、正直まだよかった。そのうち彼の首に腕を絡ませて、肩に頭を乗せたり、彼の首筋にキスをしたりと、すごい状況になってしまって……」(別の常連客)

 彼女の唇が布袋の顔に徐々に近づいて……というシーンまであったそうな。深夜2時、SPに抱きかかえられるように昭恵さんは退店し、その直後に布袋も店を後にしたそうである。
 自業自得ではあるが、安保法制が参議院で山場を迎え、議員の不祥事が次々明るみに出る中、トイレへ行く回数も増えていると言われる安倍首相は、この記事をどう読むのだろうか。
 オバマ大統領も夫人とは不仲だそうだから、オレのところと同じだと自らを慰めるのか、母親の洋子さんに泣きつくのか。離婚覚悟で昭恵さんとトコトンやり合うとは思えない。
 『セブン』がこの件についてインタビューした一般女性の反応が、子どももいないんだし、ちょっと酔うぐらいいいんじゃないという声が多いことに驚いた。
 『セブン』を読むかぎり、ちょっと飲むというレベルではない。ときどき玄関でそのまま寝てしまった妻を安倍さんが介抱していると報じられるが、酒も弁舌も、ゴルフの腕前でも妻のほうが上だと言われる安倍家は、典型的な女房関白なのであろうか。

 第1位。先週『文春』がスクープした武藤貴也自民党議員の金銭スキャンダルは、彼が離党して記者会見したが収まる気配がない。
 今週の『新潮』でも武藤議員が弁明しているが、到底納得できるものではない。そもそも株の購入話を持ちかけた際、「国会議員枠」で購入できるからカネを集めてくれと知人に言ったとすれば(武藤議員はそういう意味でメールを書いたのではないと否定している)、そういう枠がなければ武藤議員は嘘をついてカネを集めたことになり、詐欺罪等に該当するはずである。
 自民党は徹底的に内部調査をして「国会議員枠」なるものが存在するかどうかも公表するべきだ。その上で嘘をついて株購入のための資金を集めたと確認できたならば即刻、議員辞職に追い込むべきであろう。
 だが、武藤議員の訳のわからない言い分など吹っ飛ばす重大スキャンダルを、『文春』が報じている。それは武藤議員の「未成年買春」疑惑、それも相手は美少年だというのだから驚く。これが堂々の今週の第1位。
 ゲイの掲示板サイトに昨年10月、こんな誘い文句が載ったという。

 「イケメンのエロい“ウケ”がいたらサポするよ」

 ウケとは男女間のセックスでいうと女性の立場を指し、サポはサポートの略でセックスの対価としておカネを払うということだそうだ。
 それに応じたのが「嵐」の大野智(さとし)に似た細身で長身の村井雄亮さん(仮名・19)だった。最初に会ったのは11月14日。新宿・伊勢丹の角で待ち合わせて、歩いてすぐ近くのラブホテルへ直行し、1時間くらいで2万円もらったと言う。
 終わった後、靖国通りの「びっくりドンキー」でご飯を一緒に食べたというのが可笑しい。
 元日の夜には村井さんを赤坂の議員宿舎へ招き入れた。村井さんの記憶では武藤議員と会ったのは約20回、そのうち議員宿舎は4回だったそうである。2人の関係は今年の6月に終わったという。
 さて武藤議員はどう答えるのか。村井さんという男性を知っているか? という問いには「知らない」、ゲイ専用のサイトで知り合ったのでは? という質問にも「そんなウソばっかり」と否定していたが、性行為について、一回2万円を支払ったと聞いたがと聞くと「そんな、有り得ない」と言いながら声が裏返ったそうである。
 その翌日、村井さんの携帯に武藤議員が電話を掛けてきて、「あれはウソだからって言って!」と泣きついたそうだ。
 『文春』によれば売買春が法律で禁止されているのは異性間だけで、同性は違法行為とはならないそうだ。だが、相手は未成年である。もはや武藤氏に議員バッジをつける資格はない。議員辞職は免れないはずである。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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