近年、葬儀のあり方が多様化している。

 一昔前まで、葬儀は地域のしきたりや宗教に則って執り行なわれ、親の代から続く宗派の墓地に埋葬されるものだった。そして、長男などあとを継ぐものが墓守をするのが当然のことと思われてきた。しかし、少子化・核家族化の波のなかで、お墓を守る担い手がいなくなるケースもある。そうしたなか、生まれてきたのが「送骨サービス」だ。

 送骨サービスは、埼玉県にある寺院が始めたもので、宅配便で遺骨を送り、永代供養料を支払うと、境内の永代供養塔に合同納骨してもらえるというもの。現在、全国で20か所程度の寺院で同様のサービスを受け付けており、料金は3万~5万円程度(送料は別)。大手の宅配業者は遺骨の配送は受け付けていないため、配送には郵便局の「ゆうパック」が利用されている。

 送骨サービスを利用する理由は、「体が弱っていて、家族の遺骨をお寺まで持っていけない」「子どもの頃に家を出て家族を捨てた父のために、高いお金を払ってお墓を買いたくない」 など、心因的なものから、体調の問題など物理的なものまで実にさまざまだ。

 また、経済的な事情もある。日本消費者協会の「第10回 葬儀についてのアンケート調査」の報告書(2014年1月発行)によると、葬儀費用の合計は平均188.9万円。そのうち、お布施や戒名など寺院への支払いが44.6万円となっている。さらに、新たにお墓を購入するとなると、高額な費用が必要だ。たとえば東京都の多磨霊園では、1.8~2㎡の小さなものでも約158万~176万円の永代使用料がかかる(年間管理費別、平成27年度)。お金がなければ、葬儀もできず、お墓を作ることもできない。

 とくに、高齢者の貧困が問題になっている今、葬儀に関しても、近親者のみで火葬を行なう「直葬」も増えている。直葬は、斎場でのお通夜や告別式を行なわず、火葬費用程度で済むため、経済的に困窮している身寄りのない高齢者が利用するケースが多い。お墓も作れないこともあり、その場合は共同の納骨堂で永代供養されることになる。

 仏教のしきたりに従えば、納骨は忌明け法要(四十九日)のあとで、残された家族が集まって行なわれるものだ。それを、宅配便で送って寺院にお任せしてしまう送骨サービスには、「遺骨をモノ扱いしていいのか」といった異論も出ている。しかし、その遺骨は誰かが弔わなければ、さらに悲しい末路になることも予想される。

 送骨サービスは、こうした行き場のない遺骨を供養するために、現代に生まれた必然的なサービスなのかもしれない。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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