NHKの受信料の支払いについて、これを義務化する動きが政府・自民党内で出てきた。

 高市早苗(たかいち・さなえ)総務大臣は2015年10月2日の記者会見で省内に「放送をめぐる諸課題に関する検討会」を月内にも設置すると表明。NHK受信料の義務化について「当然、検討課題の一つ」と述べ、同検討委で話し合う考えを示した。

 これに先立ち、自民党でも動きがあった。同党の「放送法の改正に関する小委員会」(委員長・佐藤勉元総務大臣)が同年9月にまとめた提言で「NHK受信料の支払い義務化の検討」を総務省とNHKに求めた。

 総務省の検討会設置は自民党小委の要請を受けたもので、両者は連携しているとの見方が当然だ。

 義務化の背景にはNHK受信料の支払い率の低さがある。2014年度末で75.6%と、英国BBC放送の95.0%に比べてずいぶんと低い。よく指摘されていることだが、「4軒に1軒はタダで見ている。公平性の観点から問題だ」というわけだ。

 受信料の支払いを義務化するには、放送法を改正することが必要。検討委では受信料を支払わない人に対して罰則を科すのかどうかも議論するだろう。

 義務化するというのは「事実上、税金と同じ」ということだ。納税者の理解を得るには(1)受信料の大幅な引き下げ、(2)職員給与のカット、(3)職員数の大幅削減、(4)放送経費の透明化・削減などが前提だろう。NHKは放送センターの建て替えを計画しているが、3400億円という巨額な建設コストが取りざたされている。義務化するならそんな高額な建設費は国民が許さない。

 受信料の支払い率向上に向け、NHKの籾井勝人(もみい・かつと)会長は、10月1日の定例記者会見で「マイナンバーを使えばもっと便利になる」と述べた。義務化の議論と合わせてこれも国民的な議論が必要だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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