認知症は今や国民病といえるかもしれない。現在約500万人で2025年には700万人を突破するといわれている。だが認知症のメカニズムはまだよくわからず、抜本的な治療法は見つかってはいない。
『週刊現代』(10/10号、以下『現代』)は認知症を含めた「奇病」が多発する村があると報じている。住民のプライバシーや人権を慮って村名は明らかにしていないが、紀伊半島にある住民数百人程度の寒村である。ここに住む70代の男性がこう話す。
「私より上の世代の人たちは、『この辺りには、昔から風土病があるんや』と言っていました。毎年必ずどこかの村で患者が出て、誰かが亡くなる。(中略)
手足が震えて動かんようになって、ご飯も自分で食べられなくなり、認知症のような症状が出る人も多い」
その老人は「何でなんや」とは思うが、自分のような素人にはどうしようもない。患者が出る度に「次は自分かな」と怯えているという。
この地域に見られる「謎めいた病気」は「紀伊ALS/PDC」と呼ばれるそうだ。ALSとは「筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)」、PDCは「パーキンソン・認知症複合」の意味。
日本では紀伊半島の一部でしか見られない不可解な病気である。この病気の特徴は、身体が動かなくなり、歩行や日常生活が困難になるケースや、もの忘れや意欲の低下といった認知症の症状が出るケース、その両方が出るケースがあり、発症後数年から十数年で亡くなる人が多いが、なかには10代で発症して20代で亡くなってしまうこともあるそうだ。
「脳を調べてみると、どの患者さんにも同じような病変が見つかります。アルツハイマー病患者の脳でもみられる『タウ蛋白』という物質が、脳細胞の中に異常に蓄積しているのです」(三重大学大学院地域イノベーション学研究科・招聘教授の小久保康昌氏)
通常の発生率はALSが10万人に1人、パーキンソン病が1000人に1人といわれているから、数百人程度の村で毎年のように患者が出るというのは「きわめて頻度が高いといえます」(小久保氏)
この村の病気が解明されれば、認知症のメカニズム解明への「光明」になるかもしれない。戦後、ようやく本格的な研究が始まったが、そのきっかけは、この村から約2500km離れたグアム島南部でまったく同じ病気が多発していることが明らかになったからだ。
国の内外から多くの専門家たちがこの村に来て謎に取り組んだ。真っ先に検討されたのが「この地域の環境に、他とは違う『何か』が隠されているのではないか、という仮説である」(『現代』)
まず疑われたのは水であった。60年代に現地調査を行なった和歌山県立医科大学の故・木村潔(きよし)名誉教授は、ここの川の「澄み切ったおいしい水」に注目した。水質を調べてみるとミネラルが非常に少なく、特にカルシウムとマグネシウムの含有量が他の地域の水と比べて大きく下回っていることが判明したのである。
慢性的なミネラル不足が脳神経の細胞を殺してしまうのではないかという仮説が立てられ、飲料水や農業用水の水源を変えたり、井戸水を使わないようにするといった対策がとられた。
また、この地域の人たちが「古くなった干物など、酸化した食べ物を多く摂っているのではないか」という仮説を立てて、献立を詳しく記録することも行なわれたという。
そして80年代に入ると、こうした研究成果に加え食生活が豊かになったためか患者数は大幅に減ったというのである。同様にグアムでも患者数が減り、事態は終息しつつあるように見えたという。
だが90年代に入り再び患者が増え始めた。とりわけ認知症の症状を示す患者数は85年から95年の10年間で5倍にも激増した。水や食べ物は「真犯人」ではなかったのだ。
不可解なことに、この多発地帯に生まれた人が、そこを離れ違う土地で暮らしていても、この病気を発症するケースが珍しくないというのである。この患者同士には血縁関係にある人が少なくない。これまでの研究では患者の約8割に、その家族にも患者がいることがわかっている。近年、紀伊半島のALS患者の一部には「C9orf72」と呼ばれる遺伝子に変異が見られることなどがわかってきたという。
これは遺伝病なのか? 国際医療福祉大学特任教授の郭伸(かく・しん)氏によれば、この遺伝子の変異は北欧に多く、次にイギリスやグアム、ニューギニアで、日本人にはほとんど見られないようだ。だがこの村に住む患者からはすでに3例見つかっているというところから、北欧出身の人が黒潮に乗ってグアムや紀伊半島に流れ着いたのではないかと推測されるという。
だが先の小久保氏は、ある地域で病気が多発する場合、必ず多くの患者に共通の遺伝子が見つかるものだが「紀伊ALS/PDC」ではいまだに見つかっていないことや、この地域に来て発病するケースもわずかだがあることを考えると、遺伝だけでは説明がつかないというのだ。
環境でも遺伝でもないのか。「医学史上まれに見るミステリーは、今も人々を悩ませている」(『現代』)。小久保氏はこう語る。
「今後、高齢化が進めば、『紀伊ALS/PDC』のように、認知症と他の難病を併発する患者さんが全国でも増えるかもしれません。この多発地帯には、認知症などの脳神経の難病のしくみを解き明かす『鍵』が隠されている可能性がありますから、少しでも研究が盛んになればと思います」
早くしてくれないと、私のように認知症半歩手前の人間には間に合わない。ああ神様!
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
福山雅治と吹石一恵の電撃結婚に泣く淑女たちの声が、遠くゴラン高原まで聞こえたという。私はどっちでもいいんだが。
それよりも『週刊文春』に載った「春画」の見事さに声を上げた。あれから20有余年、ヘア・ヌードというジャパングリッシュをこの世に産み出して以来、あれほどヘア・ヌードを批判していた『文春』にこれほど見事なものが載るとは、私にはややオーバーだが感無量である。
第1位 「異色の業界誌『月刊住職』が面白すぎる!」(『週刊ポスト』10/16・23号)
第2位 「春画入門」(『週刊文春』10/8号)
第3位 「『吹石一恵』と結婚で『福山雅治』が遠慮する『強面の義父』」(『週刊新潮』10/8号)/「福山雅治結婚!」(『週刊文春』10/8号)
第3位。芸能界一のモテ男といわれる福山雅治(46)が女優の吹石一恵(33)と電撃結婚をして、全国の婦女子に涙を流させているそうだ。
2人のことは2012年1月に『フライデー』が報じている。ペットのウサギを連れた吹石が福山のマンションを訪れる「お泊まりデート」の様子が撮られ、女性誌も後追いして「公然の仲」になったのだが、それ以降ぱったり噂が出なくなり、二人の仲は終わったとさえいわれていた。
福山は警戒心が強く、恋人と外でデートをすることは絶対しないし、「マンションの設備点検にさえ居留守を使う男です(笑)」(福山の知人、『文春』)。女性の家へ行くときはオートバイで行って、部屋に入るまでフルフェイスのヘルメットを脱がなかったという。
その上、付き合っている女性は福山と付き合っていることを絶対誰にも話してはいけないという「鉄の掟」があり、それを破った女性は福山からポイ捨てされたそうだ。
そうしたいくつかの厳しい条件をクリアしたのが吹石だったのだろう。吹石は十代から福山のファンで、彼女が18歳の時、女性誌『an・an』(2001年3月30日号)で、福山がカメラマンのアラーキーこと、荒木経惟(のぶよし)の指導を受けて写真を撮るという企画で、彼女がモデルを務めたのが出会いだという。荒木氏がこう語る。
「二人が並ぶと、いい雰囲気でね。彼女の目がトローンとしてるんだよ。(中略)彼が彼女を撮ってるとき、レンズ越しにグッと来てるのが分かった。彼女は彼女で、彼への思いがにじみ出ていた」
秘密厳守の福山らしく、結婚したこと以外一切発表していない。『新潮』によれば、吹石の父親は元近鉄バッファローズ内野手として活躍した吹石徳一氏(62)。「性格も実直で、それは一人娘の一恵ちゃんを目の中に入れても痛くないほど可愛がりながらも、しつけはしっかりしてきた」(田尾安志・元楽天監督)父親だから、『フライデー』で娘が福山と交際していることが報じられたときは、自分に何の報告もないまま先に世間に出てしまったことにひどく憤慨していたという。
福山にとって「強面の義父」(『新潮』)が、なかなか難題のようだ。
「ひとたび他の女性と噂が流れれば、すぐに結婚生活が終わってしまう可能性がある。それほど、吹石のお父さんは福山にとって怖い存在なのです」(芸能レポーター石川敏男氏)
浮き名を流すことをやめて子どもをもうけてよき父になるのか、浮気は芸の肥やしと女房には絶対知られないようにこれまで通り遊ぶのか。私は、福山はテレビで見ているだけだが、家庭的な男だと思うのだが。
第2位。春画がブームだという。『文春』が「空前のブーム到来!」だと後半のカラーページまで使って特集している。
細川護煕(もりひろ)元首相&永青文庫理事長が所蔵しているものも含めた「春画」を公開した展覧会は盛況で、特に女性客が詰めかけているというのである。
「明治期の検閲がどのように人々の春画に対する意識を変えていったか」(石上阿希(いしがみ・あき)国際日本文化研究センター特任助教)をテーマにした銀座・永井画廊で開かれている「銀座『春画展』」も好評で、こちらも女性の姿が多いという。
作家の高橋克彦氏によれば、春画というのは中国が発祥で、「経験のない少女たちの教育用に寝室の壁に『春宮図(しゅんぐうず)』というセックスの絵を描かせ」ることが明代に流行し、日本にも入ってきて春画となったそうだ。
林真理子氏も連載の中で「銀座『春画展』」を見に行った様子を書いている。オープニングパーティーで春画の若い研究者がレクチャーをしたそうだが、「その方が今どきの美人なのである」(林氏)。一緒に行った作家の岩井志麻子氏が、なぜあんなに男性器を大きく描くのか、胸にはまるで興味がないのはなぜかという質問をしたそうだ。
答えは「古代からそうしたものは大きく描く風習があったと言うのだ。そして江戸の日本人は、胸にはさほど興味を持たない。色も塗られていないというのである」(林氏)
カラーページには、有名な蛸が海女と交合している葛飾北斎の「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」、極彩色の色合いが絢爛豪華な歌川国貞の「艶紫娯拾余帖(えんしごじゅうよじょう)」、直接セックス描写をしているわけではないが、なんともエロチックな喜多川歌麿の「歌満くら(うたまくら)」の3点が見開きにドーンと載っている。なかなかの迫力である。
先日、『FLASH』の記者が私に「ヘア・ヌードの歴史」について聞きたいとオフィスに来た。私が出版社に入ってからも長い間、外国のポルノを翻訳するときも桜田門(警視庁)を刺激しないよう慎重に言葉を選んだものだった。
その当時と刑法175条のワイセツ基準はなんら変わってないにもかかわらず、ヘア・ヌードという言葉が時代を動かし、今では春画までが『文春』のグラビアページを飾るようになった。今昔の感である。
第1位。全国の僧侶の4人に1人が読んでいるという「業界ナンバーワン雑誌」があると『ポスト』が報じている。今年で創刊41周年を迎えた『月刊住職』だ。
この雑誌の評判は以前から聞いてはいたが未読である。
「寺院住職実務情報誌」を謳っているが、その内容は実にジャーナリスティックだという。
住職の痴情のもつれから寺院の詐欺事件まで、ディープな情報を掲載し、話題を呼んでいるそうだ。
編集長は矢澤澄道(ちょうどう)氏で「全国で6万人といわれる住職の4人に1人が読んでくださっています」とのこと。
『月刊住職』(興山舎刊)は毎月1日発売、年間購読料は1万5000円。
内容が凄い! 衝撃のスクープと銘打った「開運詐欺に複数の伝統仏教寺院や住職が加担しているのは本当か!?」(8月号)では、複数の真言宗系寺院が開運詐欺商法グループと結託し、先祖供養料名目などで一般人にカネを振り込ませたという疑惑を報じた。
ほかにも住職や僧侶が起こしたDV、ストーカー事件を取り上げ、宗派ごとの対応を詳報するなど重厚な“調査報道”が少なくないそうである。
「住職の実生活に根ざした記事も多い。『全国多数の月収10万円以下極貧寺院の住職はいかに生きてるか』(7月号)では、全国の寺院の3割が年収100万円以下である事実を紹介。檀家からのいただきもので毎食を済ませ、冷暖房をつけずに月8万円で暮らす専業住職の極貧生活を伝えた。『下流住職』ルポといったところか」(『ポスト』)
また婚活情報もある。
「『お寺の将来も左右する結婚支援活動を必ず成功させる実践に学ぼう』(6月号)では、全国の寺院を舞台にした『婚活』を紹介。結婚を希望する男女の参加者が本堂に集い、良縁を願って般若心経を唱え、青年僧が引磬(いんきん)を『チーン』と鳴らすと席替えをする『寺コン』の模様をルポした」(同)
「檀家減少に悩む住職が人集めのため、帽子から鳩を取り出すマジックを本堂で披露する姿や、檀家をもてなすイタリアン精進料理のレシピなど、寺と地域住民の繋がりを回復させるユニークな取り組みも常に紹介している」(同)
『美坊主図鑑』などという写真集が売れていると話題になったが、そうしたモテモテ坊主はごくごく稀なのであろう。
同誌が最近関心を寄せているテーマが「住職の高齢化」だそうだ。
「これまで“住職は終身”とされていたが、高齢化で“住職の引退”が当たり前になった。最近は引退後に住職が迎える第二の人生や、死者を送る立場の住職が自身のがんなどとどう向き合うかなど、切実なテーマを積極的に取り上げています」(矢澤氏)
週刊誌の諸君、こういう雑誌を購読しなければ世の中は見えませんよ。
『週刊現代』(10/10号、以下『現代』)は認知症を含めた「奇病」が多発する村があると報じている。住民のプライバシーや人権を慮って村名は明らかにしていないが、紀伊半島にある住民数百人程度の寒村である。ここに住む70代の男性がこう話す。
「私より上の世代の人たちは、『この辺りには、昔から風土病があるんや』と言っていました。毎年必ずどこかの村で患者が出て、誰かが亡くなる。(中略)
手足が震えて動かんようになって、ご飯も自分で食べられなくなり、認知症のような症状が出る人も多い」
その老人は「何でなんや」とは思うが、自分のような素人にはどうしようもない。患者が出る度に「次は自分かな」と怯えているという。
この地域に見られる「謎めいた病気」は「紀伊ALS/PDC」と呼ばれるそうだ。ALSとは「筋萎縮性側索硬化症(きんいしゅくせいそくさくこうかしょう)」、PDCは「パーキンソン・認知症複合」の意味。
日本では紀伊半島の一部でしか見られない不可解な病気である。この病気の特徴は、身体が動かなくなり、歩行や日常生活が困難になるケースや、もの忘れや意欲の低下といった認知症の症状が出るケース、その両方が出るケースがあり、発症後数年から十数年で亡くなる人が多いが、なかには10代で発症して20代で亡くなってしまうこともあるそうだ。
「脳を調べてみると、どの患者さんにも同じような病変が見つかります。アルツハイマー病患者の脳でもみられる『タウ蛋白』という物質が、脳細胞の中に異常に蓄積しているのです」(三重大学大学院地域イノベーション学研究科・招聘教授の小久保康昌氏)
通常の発生率はALSが10万人に1人、パーキンソン病が1000人に1人といわれているから、数百人程度の村で毎年のように患者が出るというのは「きわめて頻度が高いといえます」(小久保氏)
この村の病気が解明されれば、認知症のメカニズム解明への「光明」になるかもしれない。戦後、ようやく本格的な研究が始まったが、そのきっかけは、この村から約2500km離れたグアム島南部でまったく同じ病気が多発していることが明らかになったからだ。
国の内外から多くの専門家たちがこの村に来て謎に取り組んだ。真っ先に検討されたのが「この地域の環境に、他とは違う『何か』が隠されているのではないか、という仮説である」(『現代』)
まず疑われたのは水であった。60年代に現地調査を行なった和歌山県立医科大学の故・木村潔(きよし)名誉教授は、ここの川の「澄み切ったおいしい水」に注目した。水質を調べてみるとミネラルが非常に少なく、特にカルシウムとマグネシウムの含有量が他の地域の水と比べて大きく下回っていることが判明したのである。
慢性的なミネラル不足が脳神経の細胞を殺してしまうのではないかという仮説が立てられ、飲料水や農業用水の水源を変えたり、井戸水を使わないようにするといった対策がとられた。
また、この地域の人たちが「古くなった干物など、酸化した食べ物を多く摂っているのではないか」という仮説を立てて、献立を詳しく記録することも行なわれたという。
そして80年代に入ると、こうした研究成果に加え食生活が豊かになったためか患者数は大幅に減ったというのである。同様にグアムでも患者数が減り、事態は終息しつつあるように見えたという。
だが90年代に入り再び患者が増え始めた。とりわけ認知症の症状を示す患者数は85年から95年の10年間で5倍にも激増した。水や食べ物は「真犯人」ではなかったのだ。
不可解なことに、この多発地帯に生まれた人が、そこを離れ違う土地で暮らしていても、この病気を発症するケースが珍しくないというのである。この患者同士には血縁関係にある人が少なくない。これまでの研究では患者の約8割に、その家族にも患者がいることがわかっている。近年、紀伊半島のALS患者の一部には「C9orf72」と呼ばれる遺伝子に変異が見られることなどがわかってきたという。
これは遺伝病なのか? 国際医療福祉大学特任教授の郭伸(かく・しん)氏によれば、この遺伝子の変異は北欧に多く、次にイギリスやグアム、ニューギニアで、日本人にはほとんど見られないようだ。だがこの村に住む患者からはすでに3例見つかっているというところから、北欧出身の人が黒潮に乗ってグアムや紀伊半島に流れ着いたのではないかと推測されるという。
だが先の小久保氏は、ある地域で病気が多発する場合、必ず多くの患者に共通の遺伝子が見つかるものだが「紀伊ALS/PDC」ではいまだに見つかっていないことや、この地域に来て発病するケースもわずかだがあることを考えると、遺伝だけでは説明がつかないというのだ。
環境でも遺伝でもないのか。「医学史上まれに見るミステリーは、今も人々を悩ませている」(『現代』)。小久保氏はこう語る。
「今後、高齢化が進めば、『紀伊ALS/PDC』のように、認知症と他の難病を併発する患者さんが全国でも増えるかもしれません。この多発地帯には、認知症などの脳神経の難病のしくみを解き明かす『鍵』が隠されている可能性がありますから、少しでも研究が盛んになればと思います」
早くしてくれないと、私のように認知症半歩手前の人間には間に合わない。ああ神様!
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
福山雅治と吹石一恵の電撃結婚に泣く淑女たちの声が、遠くゴラン高原まで聞こえたという。私はどっちでもいいんだが。
それよりも『週刊文春』に載った「春画」の見事さに声を上げた。あれから20有余年、ヘア・ヌードというジャパングリッシュをこの世に産み出して以来、あれほどヘア・ヌードを批判していた『文春』にこれほど見事なものが載るとは、私にはややオーバーだが感無量である。
第1位 「異色の業界誌『月刊住職』が面白すぎる!」(『週刊ポスト』10/16・23号)
第2位 「春画入門」(『週刊文春』10/8号)
第3位 「『吹石一恵』と結婚で『福山雅治』が遠慮する『強面の義父』」(『週刊新潮』10/8号)/「福山雅治結婚!」(『週刊文春』10/8号)
第3位。芸能界一のモテ男といわれる福山雅治(46)が女優の吹石一恵(33)と電撃結婚をして、全国の婦女子に涙を流させているそうだ。
2人のことは2012年1月に『フライデー』が報じている。ペットのウサギを連れた吹石が福山のマンションを訪れる「お泊まりデート」の様子が撮られ、女性誌も後追いして「公然の仲」になったのだが、それ以降ぱったり噂が出なくなり、二人の仲は終わったとさえいわれていた。
福山は警戒心が強く、恋人と外でデートをすることは絶対しないし、「マンションの設備点検にさえ居留守を使う男です(笑)」(福山の知人、『文春』)。女性の家へ行くときはオートバイで行って、部屋に入るまでフルフェイスのヘルメットを脱がなかったという。
その上、付き合っている女性は福山と付き合っていることを絶対誰にも話してはいけないという「鉄の掟」があり、それを破った女性は福山からポイ捨てされたそうだ。
そうしたいくつかの厳しい条件をクリアしたのが吹石だったのだろう。吹石は十代から福山のファンで、彼女が18歳の時、女性誌『an・an』(2001年3月30日号)で、福山がカメラマンのアラーキーこと、荒木経惟(のぶよし)の指導を受けて写真を撮るという企画で、彼女がモデルを務めたのが出会いだという。荒木氏がこう語る。
「二人が並ぶと、いい雰囲気でね。彼女の目がトローンとしてるんだよ。(中略)彼が彼女を撮ってるとき、レンズ越しにグッと来てるのが分かった。彼女は彼女で、彼への思いがにじみ出ていた」
秘密厳守の福山らしく、結婚したこと以外一切発表していない。『新潮』によれば、吹石の父親は元近鉄バッファローズ内野手として活躍した吹石徳一氏(62)。「性格も実直で、それは一人娘の一恵ちゃんを目の中に入れても痛くないほど可愛がりながらも、しつけはしっかりしてきた」(田尾安志・元楽天監督)父親だから、『フライデー』で娘が福山と交際していることが報じられたときは、自分に何の報告もないまま先に世間に出てしまったことにひどく憤慨していたという。
福山にとって「強面の義父」(『新潮』)が、なかなか難題のようだ。
「ひとたび他の女性と噂が流れれば、すぐに結婚生活が終わってしまう可能性がある。それほど、吹石のお父さんは福山にとって怖い存在なのです」(芸能レポーター石川敏男氏)
浮き名を流すことをやめて子どもをもうけてよき父になるのか、浮気は芸の肥やしと女房には絶対知られないようにこれまで通り遊ぶのか。私は、福山はテレビで見ているだけだが、家庭的な男だと思うのだが。
第2位。春画がブームだという。『文春』が「空前のブーム到来!」だと後半のカラーページまで使って特集している。
細川護煕(もりひろ)元首相&永青文庫理事長が所蔵しているものも含めた「春画」を公開した展覧会は盛況で、特に女性客が詰めかけているというのである。
「明治期の検閲がどのように人々の春画に対する意識を変えていったか」(石上阿希(いしがみ・あき)国際日本文化研究センター特任助教)をテーマにした銀座・永井画廊で開かれている「銀座『春画展』」も好評で、こちらも女性の姿が多いという。
作家の高橋克彦氏によれば、春画というのは中国が発祥で、「経験のない少女たちの教育用に寝室の壁に『春宮図(しゅんぐうず)』というセックスの絵を描かせ」ることが明代に流行し、日本にも入ってきて春画となったそうだ。
林真理子氏も連載の中で「銀座『春画展』」を見に行った様子を書いている。オープニングパーティーで春画の若い研究者がレクチャーをしたそうだが、「その方が今どきの美人なのである」(林氏)。一緒に行った作家の岩井志麻子氏が、なぜあんなに男性器を大きく描くのか、胸にはまるで興味がないのはなぜかという質問をしたそうだ。
答えは「古代からそうしたものは大きく描く風習があったと言うのだ。そして江戸の日本人は、胸にはさほど興味を持たない。色も塗られていないというのである」(林氏)
カラーページには、有名な蛸が海女と交合している葛飾北斎の「喜能会之故真通(きのえのこまつ)」、極彩色の色合いが絢爛豪華な歌川国貞の「艶紫娯拾余帖(えんしごじゅうよじょう)」、直接セックス描写をしているわけではないが、なんともエロチックな喜多川歌麿の「歌満くら(うたまくら)」の3点が見開きにドーンと載っている。なかなかの迫力である。
先日、『FLASH』の記者が私に「ヘア・ヌードの歴史」について聞きたいとオフィスに来た。私が出版社に入ってからも長い間、外国のポルノを翻訳するときも桜田門(警視庁)を刺激しないよう慎重に言葉を選んだものだった。
その当時と刑法175条のワイセツ基準はなんら変わってないにもかかわらず、ヘア・ヌードという言葉が時代を動かし、今では春画までが『文春』のグラビアページを飾るようになった。今昔の感である。
第1位。全国の僧侶の4人に1人が読んでいるという「業界ナンバーワン雑誌」があると『ポスト』が報じている。今年で創刊41周年を迎えた『月刊住職』だ。
この雑誌の評判は以前から聞いてはいたが未読である。
「寺院住職実務情報誌」を謳っているが、その内容は実にジャーナリスティックだという。
住職の痴情のもつれから寺院の詐欺事件まで、ディープな情報を掲載し、話題を呼んでいるそうだ。
編集長は矢澤澄道(ちょうどう)氏で「全国で6万人といわれる住職の4人に1人が読んでくださっています」とのこと。
『月刊住職』(興山舎刊)は毎月1日発売、年間購読料は1万5000円。
内容が凄い! 衝撃のスクープと銘打った「開運詐欺に複数の伝統仏教寺院や住職が加担しているのは本当か!?」(8月号)では、複数の真言宗系寺院が開運詐欺商法グループと結託し、先祖供養料名目などで一般人にカネを振り込ませたという疑惑を報じた。
ほかにも住職や僧侶が起こしたDV、ストーカー事件を取り上げ、宗派ごとの対応を詳報するなど重厚な“調査報道”が少なくないそうである。
「住職の実生活に根ざした記事も多い。『全国多数の月収10万円以下極貧寺院の住職はいかに生きてるか』(7月号)では、全国の寺院の3割が年収100万円以下である事実を紹介。檀家からのいただきもので毎食を済ませ、冷暖房をつけずに月8万円で暮らす専業住職の極貧生活を伝えた。『下流住職』ルポといったところか」(『ポスト』)
また婚活情報もある。
「『お寺の将来も左右する結婚支援活動を必ず成功させる実践に学ぼう』(6月号)では、全国の寺院を舞台にした『婚活』を紹介。結婚を希望する男女の参加者が本堂に集い、良縁を願って般若心経を唱え、青年僧が引磬(いんきん)を『チーン』と鳴らすと席替えをする『寺コン』の模様をルポした」(同)
「檀家減少に悩む住職が人集めのため、帽子から鳩を取り出すマジックを本堂で披露する姿や、檀家をもてなすイタリアン精進料理のレシピなど、寺と地域住民の繋がりを回復させるユニークな取り組みも常に紹介している」(同)
『美坊主図鑑』などという写真集が売れていると話題になったが、そうしたモテモテ坊主はごくごく稀なのであろう。
同誌が最近関心を寄せているテーマが「住職の高齢化」だそうだ。
「これまで“住職は終身”とされていたが、高齢化で“住職の引退”が当たり前になった。最近は引退後に住職が迎える第二の人生や、死者を送る立場の住職が自身のがんなどとどう向き合うかなど、切実なテーマを積極的に取り上げています」(矢澤氏)
週刊誌の諸君、こういう雑誌を購読しなければ世の中は見えませんよ。