来年4月、「患者申出療養」という新しい医療制度がスタートする。
患者申出療養は、難病やがんなど「困難な病気と闘う患者」が、自ら希望して、日本ではまだ承認されていない医薬品などを、健康保険が適用された治療と併用できるようにする新しい制度。規制改革会議の提案によって、2015年5月27日に成立した医療制度改革関連法で正式に導入が決定した。
日本では、健康保険が適用された「保険診療」と、適用されていない「自由診療」を同時に行なう「混合診療」が原則的に禁止されている。これを破って、ひとつの病気の治療のなかで自由診療を取り入れると、本来なら保険診療の対象の検査や入院費などにも健康保険が適用されなくなり、患者は自由診療部分だけではなく、保険診療部分も全額自己負担となる。
これは、評価が定まらない治療によって国民に健康被害が広がらないようにするための事前規制で、保険適用するかどうかの線引きは、医療の安全を守る役割も担っているからだ。
ただし、保険診療を受けたけれど病気が治らなかったという人のなかには、きちんと安全性や有効性の評価がされていなくても、新しい医薬品や治療法を試してみたいという人もいる。そうした個別のニーズを汲み取り、法律では禁止されている混合診療を部分的に認めているのが「保険外併用療養費」だ。
これまでは、(1)選定療養(今後も健康保険を適用しない差額ベッド料、大病院の初再診料など)、(2)評価療養(将来的に健康保険を適用するかどうか確認している段階の治療で先進医療、治験中の医薬品など)の2つに分類されてきた。
患者申出療養は、この保険外併用療養費の第3のカテゴリーとして位置づけられ、患者からの希望によって日本では承認されていない個別の医薬品など(自由診療部分)を健康保険が適用された保険診療と併用できるようにする。
未承認の医薬品など自由診療部分は全額自己負担だが、保険診療部分は1~3割の一部負担金で利用できるようになる。
安全性と有効性が確認されれば保険収載の道も開かれており、先進医療とほぼ同様の内容だが、(1)患者からの「申し出」を起点にしている、(2)申請から治療の実施までは原則2~6週間、(3)身近な医療機関でも利用可能といった点が特徴となっている。
規制改革会議は、患者申出療養を導入した理由として、「困難な病気と闘う患者の経済的な負担を軽減すること」を上げている。しかし、国内未承認の抗がん剤などは非常に高額だ。1か月の薬剤費だけで、数十万円から数百万円かかる。なかには2000万円近いものもあり、いくら混合診療を認めてもお金のある人しか利用できない。健康保険が適用されない限り、患者の経済的負担はさほど軽くならないため、規制改革会議の主張は医療の現場を知らないピントはずれの提案でしかないのだ。
反対に、患者申出療養制度がもうけられることで、どんどん混合診療が拡大され、新しく有効な医薬品が開発されても、いつまでも保険外に留め置かれて、健康保険の適用が遅れる懸念がある。
誰もが安心して医療を受けるには、安全性と有効性が認められた医薬品や治療は健康保険に収載していく現行制度を充実させていくのが本筋で、規制改革会議が求める患者申出療養のような混合診療の拡大ではない。
戦後、日本では国民皆保険制度を構築することで、貧富の差に関係なく、「いつでも、どこでも、だれでも」平等に医療を受けられる体制をつくってきた。
為政者によって私たちの医療が空洞化しないように、国民は今後も患者申出療養の行方を見守っていく必要がある。
患者申出療養は、難病やがんなど「困難な病気と闘う患者」が、自ら希望して、日本ではまだ承認されていない医薬品などを、健康保険が適用された治療と併用できるようにする新しい制度。規制改革会議の提案によって、2015年5月27日に成立した医療制度改革関連法で正式に導入が決定した。
日本では、健康保険が適用された「保険診療」と、適用されていない「自由診療」を同時に行なう「混合診療」が原則的に禁止されている。これを破って、ひとつの病気の治療のなかで自由診療を取り入れると、本来なら保険診療の対象の検査や入院費などにも健康保険が適用されなくなり、患者は自由診療部分だけではなく、保険診療部分も全額自己負担となる。
これは、評価が定まらない治療によって国民に健康被害が広がらないようにするための事前規制で、保険適用するかどうかの線引きは、医療の安全を守る役割も担っているからだ。
ただし、保険診療を受けたけれど病気が治らなかったという人のなかには、きちんと安全性や有効性の評価がされていなくても、新しい医薬品や治療法を試してみたいという人もいる。そうした個別のニーズを汲み取り、法律では禁止されている混合診療を部分的に認めているのが「保険外併用療養費」だ。
これまでは、(1)選定療養(今後も健康保険を適用しない差額ベッド料、大病院の初再診料など)、(2)評価療養(将来的に健康保険を適用するかどうか確認している段階の治療で先進医療、治験中の医薬品など)の2つに分類されてきた。
患者申出療養は、この保険外併用療養費の第3のカテゴリーとして位置づけられ、患者からの希望によって日本では承認されていない個別の医薬品など(自由診療部分)を健康保険が適用された保険診療と併用できるようにする。
未承認の医薬品など自由診療部分は全額自己負担だが、保険診療部分は1~3割の一部負担金で利用できるようになる。
安全性と有効性が確認されれば保険収載の道も開かれており、先進医療とほぼ同様の内容だが、(1)患者からの「申し出」を起点にしている、(2)申請から治療の実施までは原則2~6週間、(3)身近な医療機関でも利用可能といった点が特徴となっている。
規制改革会議は、患者申出療養を導入した理由として、「困難な病気と闘う患者の経済的な負担を軽減すること」を上げている。しかし、国内未承認の抗がん剤などは非常に高額だ。1か月の薬剤費だけで、数十万円から数百万円かかる。なかには2000万円近いものもあり、いくら混合診療を認めてもお金のある人しか利用できない。健康保険が適用されない限り、患者の経済的負担はさほど軽くならないため、規制改革会議の主張は医療の現場を知らないピントはずれの提案でしかないのだ。
反対に、患者申出療養制度がもうけられることで、どんどん混合診療が拡大され、新しく有効な医薬品が開発されても、いつまでも保険外に留め置かれて、健康保険の適用が遅れる懸念がある。
誰もが安心して医療を受けるには、安全性と有効性が認められた医薬品や治療は健康保険に収載していく現行制度を充実させていくのが本筋で、規制改革会議が求める患者申出療養のような混合診療の拡大ではない。
戦後、日本では国民皆保険制度を構築することで、貧富の差に関係なく、「いつでも、どこでも、だれでも」平等に医療を受けられる体制をつくってきた。
為政者によって私たちの医療が空洞化しないように、国民は今後も患者申出療養の行方を見守っていく必要がある。