現在、日本国内の著作権の保護期間は、原則として著作者が死去してから50年まで。これが環太平洋経済連携協定(TPP)の大筋合意を受け、TPP発効後は70年に延長される。20年も延びるのである。

 日本政府はアニメやマンガ、ゲームソフトなどの「輸出」を後押ししており、70年への延長については「著作権の延長で今後、著作権収入の増加が見込まれる」との触れ込みだ。

 もっとも、現時点で日本の著作権使用料の国際収支は赤字である。2014年の赤字の額は約8000億円という大きな数字だ。延長はハリウッド映画など巨大コンテンツ産業を抱える米国のほうが有利との見方がもっぱらで、日本の赤字幅は今後逆に増えるのではないかとの指摘もある。そもそも日本には非英語圏というハンデがある。

 国内に目を向ければ、影響を受けそうなのが「青空文庫」だ。同文庫は著作権が切れた小説や評論などの作品をネット上で無料公開している。ダウンロードして、タブレットやスマートフォンで読むことができる。プリントアウトして紙の形でも読むことができる。明治の文豪の夏目漱石や森鴎外をはじめとして、最近は吉川英治の大衆小説などの人気作品もアップされた。公開されているものは法律不遡及の原則(編集部注:新たに制定された法律はその制定前の行為や事実については遡って適用されないという原則。(『法律用語辞典 第4版』))で、影響を受ける可能性は低い。TPP発効のタイミング次第だが、江戸川乱歩(1965年死去)や谷崎潤一郎(同)はギリギリセーフで無料公開されそうだが、三島由紀夫(70年死去)や志賀直哉(71年死去)、川端康成(72年死去)らは公開がずっと先に延びそうだ。

   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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