中国が35年あまり続けてきた「一人っ子政策」を廃止することを決めた。

 「一人っ子政策」は計画出産による人口抑制策だ。始まったのは1979年。夫婦1組に対し、原則として子どもを1人に制限し、違反者には罰則が科される。中国は2013年に夫婦のどちらかが一人っ子の夫婦に第2子を認めるなどこれまで緩和策を行なってきたが、今後は、原則としてすべての夫婦が2人まで子どもを持てるようになる。

 それにしてもなぜ廃止に踏み切ったのか。背景にあるのは、急速に進む少子高齢化だ。中国の合計特殊出生率(1人の女性が一生に産む子どもの人数の推計値)については1.18(2010年)という数字が知れわたっている。ちなみに日本のそれは1.42(2014年)。中国の少子化の深刻さがわかる。

 少子高齢化は経済成長の阻害要因となる。労働力人口(15歳以上65歳未満の人口)や生産年齢人口(15歳以上の人口のうち、就業者と完全失業者の合計)の減少をもたらす。財政面でも社会保障費の負担増が大きくのしかかる。中国の労働力人口は2012年から減少に転じており、13億人以上を誇る人口も10年後には減少に転じると推計されている。

 圧倒的な労働力人口を誇り、「世界の工場」の役割を担ってきた中国だが、その将来に少子高齢化が大きな影を落としているわけだ。

 習近平国家主席は「出産の潜在力を更に解放することで高齢化への圧力を緩和する。労働力の供給を増加させ、人口のバランスと発展を促進する」などと一人っ子政策の廃止について説明している。ただ、その効果が思惑通りにあらわれるかは不透明だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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