日本では胃がんで亡くなる人が年間約5万人。胃がんの早期発見のためにはまだバリウム検査が一般的で毎年1000万人以上が受けているが、最近はこの検査の不確実性や危険性を指摘する声が多くなっている。
『週刊ポスト』(11/13号、以下『ポスト』)でジャーナリストの岩澤倫彦(みちひこ)氏がバリウム検査を受けたために身体障害者になったり、死亡したケースをレポートしている。
62歳の男性はバリウム検査を受けた翌日に、下腹を刺す痛みに耐えかねて病院に緊急搬送された。X線撮影の結果「バリウムが固まって大腸を圧迫し、孔(あな)が開いてしまった」ために緊急手術をしたが、身体障害者4級になってしまった。
50代の女性はバリウム検査を受ける途中で気分が悪くなり、ソファにもたれているうちに痙攣(けいれん)を起こし、死亡してしまった。2つのケースともに、検査した医療機関は「バリウムとの因果関係がハッキリしていない」と責任を認めていない。
岩澤氏は胃がん検診のためにすべての人がバリウム検査をするのは時代錯誤だと言い切り、「現在、バリウムを飲む専門医は皆無に等しい」と指摘する。
2014年度の1年間だけでバリウム製剤で大腸などに孔が開いた「穿孔(せんこう)」は68例もあったそうだ。
国立国際医療研究センター・国府台(こうのだい)病院の上村直実院長は「胃がんになる人の99%はピロリ菌の感染者」だから、全員一律に胃がん検診を受ける必要はないという。ピロリ菌感染の有無と、胃の粘膜萎縮の程度を示すペプシノゲン値を組み合わせた胃がんリスク検診をして、胃がんのリスクが高ければ内視鏡検査を受ける。ピロリ菌感染者には除菌治療を行ない、胃がん予防もしていくほうが効果的だというのである。
こうしたリスク検診に変更してピロリ除菌治療で胃がん予防をすると、5年間で医療費が4200億円削減できるという試算もある。問題は、バリウム検査を重要な収入源にしている「検診ムラ」があることと、内視鏡の医師不足が挙げられるという。
私も以前はバリウム検査をしていたが、今の主治医はバリウム検査は危ないと、血液検査だけで、何かあれば胃カメラを飲ませるやり方に切り替えた。
私はまだ胃カメラを飲んだことはない。医者の技量にもよるが、慣れると胃カメラのほうが楽だという友人もいる。
検査方法は日進月歩だが、健康リスクの目安である血圧や血糖値などの数値もさまざまな最新研究で変動しているため、医者と患者の間で軋轢(あつれき)が生まれている。
『ポスト』は同じ号で「血圧は120以下に下げろ」という記事を載せている。
これまでは血圧は140以内なら正常とされていたが、14年4月に日本人間ドック学会が「血圧147は健康」だと発表したことが大きな話題を呼んだ。
あまりの反響の大きさに驚いた学会側が「あくまで健康の目安であり、病気のリスクを示したものではない」とトーンダウンした。
今年9月にアメリカでは「血圧は120未満に下げたほうがいい」というセンセーショナルな研究が発表された。
私は30代後半のとき、初めて血圧を測ってもらったら220あり、医者に降圧剤を飲めと言われて以来ずっと薬を飲み続けている。上は130、下は70で“安定”しているが、これでもいけないというのだ。
発表したのはアメリカの国立心肺血液研究所というところで、50歳以上の心臓病や腎臓病などを発症する恐れのある高血圧患者約9400人を対象として、10年から13年まで実施された。
降圧剤などを使用し、血圧を120未満に抑えたグループと140未満に抑えたグループを比較したところ、前者は後者より心臓発作や脳卒中の発生率が3分の1減り、死亡リスクは4分の1に下がったというのである。
この数字に世界中が震撼した。日本人の成人男子の平均血圧は135.3、女性は129.5である。もし120まで正常値が引き下げられれば、日本人の大半が高血圧症と認定されてしまうのだ。
だが、東海大学医学部名誉教授の大櫛(おおぐし)陽一氏がこう反論する。
「この研究の対象者は一般の人ではなく、腎疾患または心血管疾患歴のある患者で、平均BMI(肥満度)が29.9という重度肥満群です。日本の成人でBMIが29.9を超える人は3%未満です」(『ポスト』)
よって健診の基準や高血圧の人に対する治療目標にはならないという。まずはほっとひと安心というところだが、今度はWHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)から10月26日に「一定量の加工肉を摂取し続けると大腸がんや結腸がんを発症する可能性が高まり、さらに、赤身肉にも膵臓がんや前立腺がんの発症リスクがある」という報告が出たのである。
『週刊新潮』(11/12号、以下『新潮』)によると、具体的には加工肉50グラムを毎日口にすると、発がん率が18%アップするというデータが得られたという。加工肉50グラムとはハムやベーコンなら2、3枚、市販のソーセージなら3本程度。
「加工肉には、亜硝酸ナトリウムという発色剤以外に、調味と腐敗防止のために多くの食塩が用いられている。塩分の多量摂取が胃がんのリスクを高めることは、医学的にも実証されています」(日本食育協会の本多京子理事)
赤身肉にも動物性タンパク質や脂肪をエサにしている大腸菌や黄色ブドウ球菌などの悪玉菌がいて、その働きによってアンモニアや硫化水素などの有害物質や発がん性物質が増加してしまうというのである。
これにはソーセージ生産額世界一を誇るドイツや食肉生産大国であるオーストラリアなどが、食べ過ぎなければ心配ないとの声明を発表して、打ち消しに躍起になっている。
『新潮』も、日本人の加工肉や赤身肉の摂取量は欧米人に比べて少ない、長寿の人間に菜食主義者はいない、肉にはウイルスや菌に対する免疫力を高めてくれるトリプトファンがふんだんに含まれているから、元気で長生きしたかったら肉を食べろという。
これに関してはさほど神経質になることはなさそうだが、長寿の条件が『週刊現代』(11/21号)に出ていたので紹介しよう。90歳以上の健康な5人の食生活を調べたら、全員が酒はたしなむ程度と答えたそうだ。長生きする人に大酒飲みはいないそうだ。どの条件を当てはめてみても私は長生きはできないようだ。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
戦争の危機、日韓、日中の衝突、認知症の激増。日本には考えると嫌になるほど難問が山積している。それなのに政治家は一億総活躍社会などと寝ぼけたことを言って、目の前にある危機を見ようともしない。こんな世とは早くおさらばしたいと思っても、夜になると酒が恋しくなって、一杯飲むと憂き世を忘れる。こんな私も馬鹿なヤツでございます。
第1位 「『認知症老人』1000万人に! ニッポンの大ピンチ」(『週刊現代』11/21号)
第2位 「安倍晋三『朴槿恵の前で大失態』一部始終」(『週刊現代』11/21号)
第3位 「自衛官の『戦死』今そこにある危機」(『週刊朝日』11/20号)
第3位。『朝日』の記事はこんな描写から始まる。
「11月3日、航空自衛隊入間(いるま)基地(埼玉県狭山市)であった入間航空祭には、約20万人(主催者発表)もの航空ファンが詰めかけた。(中略)
だが、祝祭ムードとは対照的に、会場の片隅に設けられた『自衛官募集』のブースだけは、人影がまばら。採用説明会のテントの下には空席のパイプ椅子が並び、迷彩服姿の担当者が手持ち無沙汰に座っていた」
今夏、2015年度の自衛隊一般曹候補生(下士官)の応募者は前年度から約2割減り、過去9年間で最少になったという。
安全保障関連法成立で自衛官が戦闘に巻き込まれるリスクが高まったことと関連しているのではないかと『朝日』は書いているが、当然であろう。
しかも、危機はすぐそこまで迫っているのだ。自衛隊が南スーダンで実施している国連平和維持活動(PKO)の任務に、来年11月の派遣部隊の交代時に、今回の法改正によって合法とされた「駆けつけ警護」を加えることが検討されているからだ。
「『警護』といっても、実態は戦闘にほかなりません。2ケタ単位、最悪3ケタの死者が出ることもあり得る。(中略)自衛隊は諸外国の軍隊のように救急救命の制度が整っておらず、医師法や薬事法の制約で衛生兵による現場での治療や薬の投与も十分にできない。演習場の近くに治療施設のある普段の訓練時とはまったく状況が違うのに、命を守る備えができていないのです」(元陸上自衛隊レンジャー隊員の井筒高雄氏)
闇雲に法律を作ったため、肝心の細部を詰めていないから自衛隊員は戦地で自らを守ることができないというのである。
さらに、戦地で自衛隊員が死んだとしても、戦死という言葉は使えず、靖国神社に合祀することもできない。
そのために市ヶ谷の防衛省の敷地内に大規模な式典も行なえる慰霊碑地区(メモリアルゾーン)が整備され、これまでに事故などで殉職した1800人以上の自衛官の銘板が納められているそうで、ここに祀られる可能性が高いそうだ。
日本の国を守るためではなく、米国のために日本も血を流さないと対等な立場になれないという理由では、自衛官が死を賭してでもという大義にはなり得ないはずである。
公務中での死亡には遺族年金や、国から弔慰・見舞金が支払われる。現行では最高限度が6000万円だが、イラク派遣時には例外的に9000万円に引き上げられた。
だが、死者が増えるとアメリカのように、戦死者の弔慰金が1200万円程度にコストカットされないとも限らないのである。
さらに自衛官のほとんどが入っている「防衛省職員団体生命保険」は原則として、「戦争その他の変乱によるとき」は保険金が支払われないことになっているそうである。
こうしたことも見直さずに、頼むから米国のために死んできてくれと言われても、わかりましたと行く自衛官がどれくらいいるのだろうか。
否、どんなに「補償」が完備されたとしても、大義のない戦争へ自衛隊を行かせることなどあってはいけない。今すぐにでもこの法案を廃案にすべきである。
第2位。『現代』は日韓首脳会談のときの安倍首相の“異変”について報じている。これが事実なら大スクープだと思うのだが、目次の扱いは小さく目立たない。どうしてなのだろう?
それは安倍首相が朴(パク)大統領との少人数の首脳会談の席で起きたという。朴大統領が慰安婦問題で、韓国国民が納得のいく対応をとってほしいと述べた。次に真向かいに座る安倍が発言する番になった。
「『ええ、わが国といたしましても……』
安倍首相は、必死に語りかけようとするが、ろれつが回らなかった。
韓国の外交関係者が明かす。
『朴大統領と安倍首相の慰安婦問題を巡る応酬の中で、「異変」が起こったのです。韓国側の参加者の話によれば、安倍首相の顔はみるみるドス黒くなっていき、とても健常者には見えなかったそうです。
安倍首相に不調が見られたので、横に座っていた岸田外相や谷内局長がフォローした』」(『現代』)
それは故・中川昭一財務相が「酩酊会見」したときのようだったが、もちろん安倍首相は酩酊していたわけではなかった。
やはり持病の潰瘍性大腸炎が悪化してきているからだろうか。このところ「夜の会合の最中に吐血した」(『文春』)、「官邸執務室で体調不良を訴え応急手当を受けた」(『ポスト』)という報道が目に付く。
特にこの持病にはストレスが大敵である。日中韓の首脳会談は安倍首相に凄まじいストレスを与えたはずである。これが事実だとしたら、安倍首相念願の東京五輪を現役の首相で迎えることは不可能に近い。否、年明け早々の退陣もあり得るかもしれない。
『現代』発売と同時に、安倍首相は同誌に抗議した。
「安倍晋三首相は9日、同日発売の『週刊現代』に掲載された記事が『全くの虚偽』などとして、講談社の野間省伸(よしのぶ)社長らに対し、事務所を通じて記事の撤回と訂正、謝罪を求める抗議文を送った。誠実な対応がない場合は『法的措置も検討する』としている」(産経新聞11月10日付)
『文春』や『ポスト』の記事には抗議したのだろうか。こうした報道が次々に出るということは煙があり火元があるということだ。今のところ『現代』編集部は「書いたとおり」だとしているそうだが、事実ならば徹底的に突っ張ってほしいものである。
第1位。『現代』は、2025年に日本の認知症患者・認知症予備軍の数は合計1000万人を突破する、65歳以上の3人に1人、全国民の約10人に1人がボケるという人類の歴史上例を見ない事態が迫っていると巻頭で報じている。
「10人に1人が認知症ともなれば、現在のような高い水準の介護・医療サービスをすべての人に行きわたらせることは、とうてい不可能と言わざるを得ません。財政破綻を避け、なおかつ現状の社会保障を維持しようとすると、現役世代の収入を9割以上召し上げなければならないからです」(元大蔵省主計官で政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏)
厚生労働省関係者が言っているように、政治家も官僚たちも「もう、どうすることもできない」と気がついてはいるが、さじを投げてしまっているのが現実であろう。
そして老老介護ならぬ認知症が認知症の面倒を見る「認認介護」が急増していくのである。
最近、老人のドライバーが引き起こす自動車事故が頻発しているが、こんな事故はますます増え続けるに違いない。
老人ホームでの認知症同士の争いや暴力沙汰が頻発し、SEXがらみの不祥事も、若者の特権ではなくなる。
経済大国ニッポンから認知症大国ニッポンになるのだ。想像してみただけで恐ろしくなるではないか。だがそれはすでに始まっているのである。
『週刊ポスト』(11/13号、以下『ポスト』)でジャーナリストの岩澤倫彦(みちひこ)氏がバリウム検査を受けたために身体障害者になったり、死亡したケースをレポートしている。
62歳の男性はバリウム検査を受けた翌日に、下腹を刺す痛みに耐えかねて病院に緊急搬送された。X線撮影の結果「バリウムが固まって大腸を圧迫し、孔(あな)が開いてしまった」ために緊急手術をしたが、身体障害者4級になってしまった。
50代の女性はバリウム検査を受ける途中で気分が悪くなり、ソファにもたれているうちに痙攣(けいれん)を起こし、死亡してしまった。2つのケースともに、検査した医療機関は「バリウムとの因果関係がハッキリしていない」と責任を認めていない。
岩澤氏は胃がん検診のためにすべての人がバリウム検査をするのは時代錯誤だと言い切り、「現在、バリウムを飲む専門医は皆無に等しい」と指摘する。
2014年度の1年間だけでバリウム製剤で大腸などに孔が開いた「穿孔(せんこう)」は68例もあったそうだ。
国立国際医療研究センター・国府台(こうのだい)病院の上村直実院長は「胃がんになる人の99%はピロリ菌の感染者」だから、全員一律に胃がん検診を受ける必要はないという。ピロリ菌感染の有無と、胃の粘膜萎縮の程度を示すペプシノゲン値を組み合わせた胃がんリスク検診をして、胃がんのリスクが高ければ内視鏡検査を受ける。ピロリ菌感染者には除菌治療を行ない、胃がん予防もしていくほうが効果的だというのである。
こうしたリスク検診に変更してピロリ除菌治療で胃がん予防をすると、5年間で医療費が4200億円削減できるという試算もある。問題は、バリウム検査を重要な収入源にしている「検診ムラ」があることと、内視鏡の医師不足が挙げられるという。
私も以前はバリウム検査をしていたが、今の主治医はバリウム検査は危ないと、血液検査だけで、何かあれば胃カメラを飲ませるやり方に切り替えた。
私はまだ胃カメラを飲んだことはない。医者の技量にもよるが、慣れると胃カメラのほうが楽だという友人もいる。
検査方法は日進月歩だが、健康リスクの目安である血圧や血糖値などの数値もさまざまな最新研究で変動しているため、医者と患者の間で軋轢(あつれき)が生まれている。
『ポスト』は同じ号で「血圧は120以下に下げろ」という記事を載せている。
これまでは血圧は140以内なら正常とされていたが、14年4月に日本人間ドック学会が「血圧147は健康」だと発表したことが大きな話題を呼んだ。
あまりの反響の大きさに驚いた学会側が「あくまで健康の目安であり、病気のリスクを示したものではない」とトーンダウンした。
今年9月にアメリカでは「血圧は120未満に下げたほうがいい」というセンセーショナルな研究が発表された。
私は30代後半のとき、初めて血圧を測ってもらったら220あり、医者に降圧剤を飲めと言われて以来ずっと薬を飲み続けている。上は130、下は70で“安定”しているが、これでもいけないというのだ。
発表したのはアメリカの国立心肺血液研究所というところで、50歳以上の心臓病や腎臓病などを発症する恐れのある高血圧患者約9400人を対象として、10年から13年まで実施された。
降圧剤などを使用し、血圧を120未満に抑えたグループと140未満に抑えたグループを比較したところ、前者は後者より心臓発作や脳卒中の発生率が3分の1減り、死亡リスクは4分の1に下がったというのである。
この数字に世界中が震撼した。日本人の成人男子の平均血圧は135.3、女性は129.5である。もし120まで正常値が引き下げられれば、日本人の大半が高血圧症と認定されてしまうのだ。
だが、東海大学医学部名誉教授の大櫛(おおぐし)陽一氏がこう反論する。
「この研究の対象者は一般の人ではなく、腎疾患または心血管疾患歴のある患者で、平均BMI(肥満度)が29.9という重度肥満群です。日本の成人でBMIが29.9を超える人は3%未満です」(『ポスト』)
よって健診の基準や高血圧の人に対する治療目標にはならないという。まずはほっとひと安心というところだが、今度はWHO(世界保健機関)傘下のIARC(国際がん研究機関)から10月26日に「一定量の加工肉を摂取し続けると大腸がんや結腸がんを発症する可能性が高まり、さらに、赤身肉にも膵臓がんや前立腺がんの発症リスクがある」という報告が出たのである。
『週刊新潮』(11/12号、以下『新潮』)によると、具体的には加工肉50グラムを毎日口にすると、発がん率が18%アップするというデータが得られたという。加工肉50グラムとはハムやベーコンなら2、3枚、市販のソーセージなら3本程度。
「加工肉には、亜硝酸ナトリウムという発色剤以外に、調味と腐敗防止のために多くの食塩が用いられている。塩分の多量摂取が胃がんのリスクを高めることは、医学的にも実証されています」(日本食育協会の本多京子理事)
赤身肉にも動物性タンパク質や脂肪をエサにしている大腸菌や黄色ブドウ球菌などの悪玉菌がいて、その働きによってアンモニアや硫化水素などの有害物質や発がん性物質が増加してしまうというのである。
これにはソーセージ生産額世界一を誇るドイツや食肉生産大国であるオーストラリアなどが、食べ過ぎなければ心配ないとの声明を発表して、打ち消しに躍起になっている。
『新潮』も、日本人の加工肉や赤身肉の摂取量は欧米人に比べて少ない、長寿の人間に菜食主義者はいない、肉にはウイルスや菌に対する免疫力を高めてくれるトリプトファンがふんだんに含まれているから、元気で長生きしたかったら肉を食べろという。
これに関してはさほど神経質になることはなさそうだが、長寿の条件が『週刊現代』(11/21号)に出ていたので紹介しよう。90歳以上の健康な5人の食生活を調べたら、全員が酒はたしなむ程度と答えたそうだ。長生きする人に大酒飲みはいないそうだ。どの条件を当てはめてみても私は長生きはできないようだ。
元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
戦争の危機、日韓、日中の衝突、認知症の激増。日本には考えると嫌になるほど難問が山積している。それなのに政治家は一億総活躍社会などと寝ぼけたことを言って、目の前にある危機を見ようともしない。こんな世とは早くおさらばしたいと思っても、夜になると酒が恋しくなって、一杯飲むと憂き世を忘れる。こんな私も馬鹿なヤツでございます。
第1位 「『認知症老人』1000万人に! ニッポンの大ピンチ」(『週刊現代』11/21号)
第2位 「安倍晋三『朴槿恵の前で大失態』一部始終」(『週刊現代』11/21号)
第3位 「自衛官の『戦死』今そこにある危機」(『週刊朝日』11/20号)
第3位。『朝日』の記事はこんな描写から始まる。
「11月3日、航空自衛隊入間(いるま)基地(埼玉県狭山市)であった入間航空祭には、約20万人(主催者発表)もの航空ファンが詰めかけた。(中略)
だが、祝祭ムードとは対照的に、会場の片隅に設けられた『自衛官募集』のブースだけは、人影がまばら。採用説明会のテントの下には空席のパイプ椅子が並び、迷彩服姿の担当者が手持ち無沙汰に座っていた」
今夏、2015年度の自衛隊一般曹候補生(下士官)の応募者は前年度から約2割減り、過去9年間で最少になったという。
安全保障関連法成立で自衛官が戦闘に巻き込まれるリスクが高まったことと関連しているのではないかと『朝日』は書いているが、当然であろう。
しかも、危機はすぐそこまで迫っているのだ。自衛隊が南スーダンで実施している国連平和維持活動(PKO)の任務に、来年11月の派遣部隊の交代時に、今回の法改正によって合法とされた「駆けつけ警護」を加えることが検討されているからだ。
「『警護』といっても、実態は戦闘にほかなりません。2ケタ単位、最悪3ケタの死者が出ることもあり得る。(中略)自衛隊は諸外国の軍隊のように救急救命の制度が整っておらず、医師法や薬事法の制約で衛生兵による現場での治療や薬の投与も十分にできない。演習場の近くに治療施設のある普段の訓練時とはまったく状況が違うのに、命を守る備えができていないのです」(元陸上自衛隊レンジャー隊員の井筒高雄氏)
闇雲に法律を作ったため、肝心の細部を詰めていないから自衛隊員は戦地で自らを守ることができないというのである。
さらに、戦地で自衛隊員が死んだとしても、戦死という言葉は使えず、靖国神社に合祀することもできない。
そのために市ヶ谷の防衛省の敷地内に大規模な式典も行なえる慰霊碑地区(メモリアルゾーン)が整備され、これまでに事故などで殉職した1800人以上の自衛官の銘板が納められているそうで、ここに祀られる可能性が高いそうだ。
日本の国を守るためではなく、米国のために日本も血を流さないと対等な立場になれないという理由では、自衛官が死を賭してでもという大義にはなり得ないはずである。
公務中での死亡には遺族年金や、国から弔慰・見舞金が支払われる。現行では最高限度が6000万円だが、イラク派遣時には例外的に9000万円に引き上げられた。
だが、死者が増えるとアメリカのように、戦死者の弔慰金が1200万円程度にコストカットされないとも限らないのである。
さらに自衛官のほとんどが入っている「防衛省職員団体生命保険」は原則として、「戦争その他の変乱によるとき」は保険金が支払われないことになっているそうである。
こうしたことも見直さずに、頼むから米国のために死んできてくれと言われても、わかりましたと行く自衛官がどれくらいいるのだろうか。
否、どんなに「補償」が完備されたとしても、大義のない戦争へ自衛隊を行かせることなどあってはいけない。今すぐにでもこの法案を廃案にすべきである。
第2位。『現代』は日韓首脳会談のときの安倍首相の“異変”について報じている。これが事実なら大スクープだと思うのだが、目次の扱いは小さく目立たない。どうしてなのだろう?
それは安倍首相が朴(パク)大統領との少人数の首脳会談の席で起きたという。朴大統領が慰安婦問題で、韓国国民が納得のいく対応をとってほしいと述べた。次に真向かいに座る安倍が発言する番になった。
「『ええ、わが国といたしましても……』
安倍首相は、必死に語りかけようとするが、ろれつが回らなかった。
韓国の外交関係者が明かす。
『朴大統領と安倍首相の慰安婦問題を巡る応酬の中で、「異変」が起こったのです。韓国側の参加者の話によれば、安倍首相の顔はみるみるドス黒くなっていき、とても健常者には見えなかったそうです。
安倍首相に不調が見られたので、横に座っていた岸田外相や谷内局長がフォローした』」(『現代』)
それは故・中川昭一財務相が「酩酊会見」したときのようだったが、もちろん安倍首相は酩酊していたわけではなかった。
やはり持病の潰瘍性大腸炎が悪化してきているからだろうか。このところ「夜の会合の最中に吐血した」(『文春』)、「官邸執務室で体調不良を訴え応急手当を受けた」(『ポスト』)という報道が目に付く。
特にこの持病にはストレスが大敵である。日中韓の首脳会談は安倍首相に凄まじいストレスを与えたはずである。これが事実だとしたら、安倍首相念願の東京五輪を現役の首相で迎えることは不可能に近い。否、年明け早々の退陣もあり得るかもしれない。
『現代』発売と同時に、安倍首相は同誌に抗議した。
「安倍晋三首相は9日、同日発売の『週刊現代』に掲載された記事が『全くの虚偽』などとして、講談社の野間省伸(よしのぶ)社長らに対し、事務所を通じて記事の撤回と訂正、謝罪を求める抗議文を送った。誠実な対応がない場合は『法的措置も検討する』としている」(産経新聞11月10日付)
『文春』や『ポスト』の記事には抗議したのだろうか。こうした報道が次々に出るということは煙があり火元があるということだ。今のところ『現代』編集部は「書いたとおり」だとしているそうだが、事実ならば徹底的に突っ張ってほしいものである。
第1位。『現代』は、2025年に日本の認知症患者・認知症予備軍の数は合計1000万人を突破する、65歳以上の3人に1人、全国民の約10人に1人がボケるという人類の歴史上例を見ない事態が迫っていると巻頭で報じている。
「10人に1人が認知症ともなれば、現在のような高い水準の介護・医療サービスをすべての人に行きわたらせることは、とうてい不可能と言わざるを得ません。財政破綻を避け、なおかつ現状の社会保障を維持しようとすると、現役世代の収入を9割以上召し上げなければならないからです」(元大蔵省主計官で政策研究大学院大学名誉教授の松谷明彦氏)
厚生労働省関係者が言っているように、政治家も官僚たちも「もう、どうすることもできない」と気がついてはいるが、さじを投げてしまっているのが現実であろう。
そして老老介護ならぬ認知症が認知症の面倒を見る「認認介護」が急増していくのである。
最近、老人のドライバーが引き起こす自動車事故が頻発しているが、こんな事故はますます増え続けるに違いない。
老人ホームでの認知症同士の争いや暴力沙汰が頻発し、SEXがらみの不祥事も、若者の特権ではなくなる。
経済大国ニッポンから認知症大国ニッポンになるのだ。想像してみただけで恐ろしくなるではないか。だがそれはすでに始まっているのである。