個人のマンションや家の空き部屋に客を泊めて料金をとる「民泊」。旅館業法で規制されているが、これを解禁する動きが出ている。

 政府はすでに国家戦略特区による規制緩和で民泊を認める方針を打ち出しており、大阪府は2015年10月、宿泊日数など一定の条件を満たせば旅館業法の適用外で民泊を認める条例を国内では初めて制定した。2016年中にも民泊の営業が始まる。東京の大田区や品川区でも同様な条例を制定する方向だ。また政府の規制改革会議は新たな主要議題として民泊を取り上げることになった。民泊を国家戦略特区だけでなく全国規模で展開することを視野に2016年6月に実施計画をまとめるとの見方がもっぱらだ。

 民泊が必要なのは、外国人旅行客が増えて都市部を中心にホテル不足が深刻化しているからだ。国土交通省の観光統計によると、2015年8月の客室稼働率は全国平均で70.2%で過去最高。とくに外国人旅行客が多く利用するシティーホテルは85.2%で予約しにくい状況だ。そのためシティホテルの宿泊客はビジネスホテルに流れ、ビジネスホテルの稼働率も80.7%に達している。出張が多いビジネスマンからは「最近、ビジネスホテルが取れない」「ホテル代が高くなった」といった声が聞こえてくる。

 安倍政権は外国人旅行客を増やすのに熱心だが、急増するホテル需要に客室数が追いついていない。民泊にはこれを補う側面があるだろうが、騒音やゴミ出しなど問題も起きている。安全・衛生管理なども果たして十分なのかどうか。クリアすべき課題がある。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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