英語のインバウンド(inbound)は、本来「(外から)入ってくる」という意味だ。雑誌やニュースなどによって、少し使い方のぶれがあるので混乱するかもしれないが、基本的に「外国人の日本観光(客)」と捉えておけばいいだろう。たとえば「インバウンド消費」といえば、訪日観光客による国内での買い物をさすわけだ。

 インバウンドとは逆に、日本からの海外旅行のことを「アウトバウンド」という。わが国ではもともと、アウトバウンドと比較してインバウンドが少ないことから、政府が十数年にわたって観光客の誘致に躍起となっていた。その戦略が結実したか、あるいは円安などの影響か、大都市では外国人による消費が明らかに伸びている。ことに2015年は、「日経MJヒット商品番付」による表現を使えば「インバウンド旋風」と呼ばれる好調ぶり。現実として徐々に日本の人口が減っていくなか、この活況は頼みの綱かもしれない。

 アジア地域からの外国人が、家電や日用品を大量購入する「爆買い」は、今年の大きなトピックとなった。爆買いの象徴的な存在といえば、量販店のドン・キホーテ。多言語によるPOP(店頭で掲示される商品説明)を導入するなど、いち早くインバウンドの動向を察知していた。その手法は、いまや大手のデパート、また商店街などでも参考にしているという。

 2020年東京五輪に向けて、外国人を迎える環境は着々と整いつつある。いまこそ「おもてなし」とやらの実力が問われそうだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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