このところ、東京都武蔵野市に本社を置くメーカー「バルミューダ」が、トレンド情報の記事でよく取り上げられている。

 社長の寺尾玄(てらお・げん)氏が元プロのミュージシャンであることなど、同社には語るべき個性が多い。当初はノートパソコン用の冷却台などを開発していたが、現在は扇風機や空気清浄機などで知られている。看板商品の「GreenFan」は、高級扇風機という市場を創出した。全体としてプロダクトデザインの感覚でも高い評価があり、俗な表現をすれば「センスのいい企業」なのだ。

 2015年のバルミューダ最大の話題は、5月末に発売したオーブントースター「BALMUDA The Toaster」のヒットであろう。寺尾社長自身が朝食はパン派ということで、こだわりに満ちた商品となっている。それまでのトースターといえば、安価なキッチン家電の代表格。それが2万円台であるのに、パン好きの支持を得ているのだ。パン工房で食べられるようなモチモチふわふわの味わいを、水蒸気と温度制御によって実現させる。強気の値段というより、無骨なまでに「うまさ」への追求をした必然的なプライスなのだといえよう。

 バルミューダは、寺尾社長にしてみれば「家電メーカー」ではない。家電というのは狭い枠にとらわれた概念で、生産しているのはあくまで現代の「道具」であるとインタビューなどで発言している。その感性が、商品を一歩高い段階へと引き上げているようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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