1シーズンで「打率3割、30本塁打、30盗塁」をマークすること。打撃の安定力、長打力、機動力の三つを備えた選手が達成でき、身体、技術の能力の高さを証明する記録として認知されている。過去には秋山幸二、金本知憲(ともあき)、松井稼頭央(かずお)らの8人しか達成していない。

 ……のに今年、セ・パ両リーグで福岡ソフトバンクホークスの柳田悠岐(やなぎだ・ゆうき)と東京ヤクルトスワローズの山田哲人(てつと)がWで達成してしまったということで、にわかフィーチャーされ、年末恒例の『2015ユーキャン新語・流行語大賞』の年間大賞まで受賞してしまうほどのメジャー語へと成長した。

 本来、野球好きしか知らない比較的マニアックな言葉であり、それがここまでの脚光を浴びるのは「生涯一野球人」を自称する筆者としては喜ばしいかぎりだが、「なんでコイツが流行語大賞なの?」という声も今年に関しては少なくない、と聞く。

 しかし、同じスポーツ界での今年の大ブレイク語「五郎丸(ポーズ)」などの、固有名詞が入った一過性のワードより、こっちのほうが“野球音痴”な人たちの「?」を喚起するという意味で、ずっと意義があると筆者は考える。これ以上「五郎丸」だけが独り歩きする状況は、ラグビー界にとってもあまりプラスにならないだろうし……。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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