「警備犬」という言葉をご存じだろうか。犯人を追跡する「警察犬」とは異なり、テロ対策、爆発物の捜索、災害現場での救助などを行なう。2015年12月、おそらくもっとも有名な警備犬と思われるジャーマンシェパードのレスター号が、惜しまれつつこの世を去った。告別式は警視庁の警備犬訓練所でいとなまれ、関係者らが別れを惜しんだ。

 レスター号が有名になったのは2004年10月。新潟県中越地震で長岡市に派遣された際、土砂崩れ現場で当時2歳の男の子を発見したことによる。災害医療では、よく「72時間の壁」という言葉が使われる。これを過ぎると生存率が急激に低下するというものだ。しかし、男の子が救出されたのは地震から92時間後。この事実はマスコミ各社で「奇跡」と報道されたのだった。合わせて足を負傷しつつ救助活動を行なったことも伝えられている。ちなみに、レスター号に救われた男の子は無事にすくすくと育っているそうだ。

 その後も2008年の中国・四川大地震などで活躍。2011年にはニュージーランド大地震にも派遣されたが、この年に後任が決まったことから引退し、警備犬訓練所で静かに余生を送っていた。今回の死は13歳、人間でいえば100歳ぐらいにあたろうかという高齢での大往生であった。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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