公的な介護保険は、要介護度に応じて1か月に利用できるサービスの限度額が決められている。

 要介護度は、要支援1~2、要介護1~5の合計7段階あり、数字が大きくなるほど介護の必要性が高いと判断され、利用できるサービスの限度額も増えていく。

 この限度額の範囲内で、1か月に利用する介護サービスの内容を決めるのが「ケアプラン」で、いうなれば介護保険の利用計画書だ。要介護認定を受けても、ケアプランを作って翌月に使うサービスを予約しないと、介護保険は利用できない。非常に重要なものだ。

 ケアプランは、介護サービスの内容だけではなく、そのサービスをどこの事業者から受けるか、何時間利用するか、といったことも決めなければならない。提出書類も独特で、複雑な介護報酬の計算などもある。そのため、現在は99%の人が介護支援専門員(ケアマネージャー)に作成を依頼している。

 ケアマネージャーに依頼すれば、利用できる限度額の範囲内でケアプランを作ってくれて、面倒な手続きをすべて任せられる。ただし、ひとりのケアマネージャーが担当する利用者は平均30人以上で、激務となっている。そのため、画一的なプランになりがちで、「本当に、その人らしい生き方を支えるものになっているか」という疑問の声も上がっている。

 ケアマネージャーに依頼するケアプランの作成料は、全額が介護保険の財源から支払われており、利用者の負担はない。しかし、高齢化によって増え続ける介護給付費を抑えるために、このケアプランの作成料の一部を利用者負担にしようという案が出ているのだ。 有料化が実現すると、介護サービス利用者の自己負担はこれまで以上に増えるので、高齢世帯の家計に影響を及ぼすことになる。

 だが、ケアプランは必ずしもケアマネージャーが作成しなければならないわけではない。利用者が自ら作成して届け出ることも法的に認められており、実際にケアプランを自己作成して主体的に介護に取り組んでいる人たちもいる。

 その代表例が、「全国マイケアプラン・ネットワーク」という市民団体だ。ここでは、定期的にワークショップを開催して、利用者や家族によるケアプランの自己作成を支援している。

 ケアプランを自己作成すると、「介護保険や他の介護をめぐる制度がよくわかる」「事業者やケアマネージャーと対等な立場で話ができるようになる」「本人の希望はもちろん、家族の状態も考慮に入れた広い視野でのケアプランが立てられる」といったメリットが生まれる。

 最終的な事務作業はケアマネージャーに依頼するにしても、自分や家族にどのような介護サービスが必要なのか、どんな介護を受けたいかを自ら考えることは大切なことだ。

 主体的に介護と関わることで、反対に介護保険を使わなくても、自分でできること、地域の人やボランティアの手を借りて解決できるものがあることも分かったりする。それが結果的に介護費用の節約につながることもある。

 最後まで自分らしく暮らすためのケアプランはどんなものなのか。有料化の話題によって、主体的に介護に取り組む人が増えるきっかけになることを期待したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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