世界で風力発電の導入が、年々、勢いを増している。

 2010年に1億9800万kWだった風力発電の発電能力は、2015年末には4億3242万kWまで増加。発電能力3億8255万kW(2016年1月時点)の原子力を上回ったことが、「世界風力会議」(GWEC)の調査で明らかになった。

 この風力発電の設備投資を牽引しているのが中国だ。

 2015年に新設された風力発電は過去最大の6301万kWで、その半分にあたる3050万kWは中国のものだ。中国では、石炭や化石燃料からのエネルギー転換を進めており、2013年末時点で国内の全発電設備の7%以上が風力となっている。

 2位はアメリカの860万kW、3位はドイツの601万kW、4位はブラジルの275万kW、5位はインドの262万kWで、積極的に風力発電を取り入れていこうとする姿勢がうかがわれる。

 それに対して、日本はわずか25万kWで、発電能力、新設ともに20位程度。風力発電の導入について、日本は完全に世界の潮流に乗り遅れているのだ。

 日本で風力発電の導入が遅れている理由のひとつが、大型風力発電所の建設に対する厳しい環境影響評価(環境アセスメント)の義務付けだ。2012年10月に法律が改正され、出力7500kW以上の風力発電所は、認可を受ける前に環境アセスメントの手続きが複雑になり、工事開始までの準備に膨大な手間がかかり、手続きだけでも4~5年を要するようになってしまったのだ。

 その結果、日本では、事故を起こした原子力発電所の再稼働は次々と許可されているのに、風力発電所の建設は遅々として進まないという皮肉な現象が起こっているのだ。

 昨年12月の国連気候変動枠組み条約第21回締約国会議(COP21)で採択されたパリ協定(温暖化防止の国際枠組み)で、日本は2030年度までに温暖化ガス排出量を2013年度よりも26%減らすことになった。

 この目標達成のため、日本は再生可能エネルギーの比率(水力を除く)を現在の約3%から、2030年度までに15%程度に引き上げる予定だ。太陽光の2倍の効率で電気をつくれる風力発電の導入は、再生可能エネルギーの比率引き上げには欠かせない存在になるため、国も重い腰をあげて、大型風力発電導入の後押しを始めた。

 今年4月の電力自由化以降は、新たに参入する業者のなかには、再生可能エネルギーによる電気の販売をウリとしたプランを設けるところもあるようだ。

 「何でつくられた電気なのか」を消費者が意識し、その需要が高まれば、立ち遅れている日本の風力発電の後押しができるかもしれない。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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