東京五輪の開催が近づいている。日本各所で訪日外国人に向けた様々な取り組みが続いており、外国語版の地図をわかりやすくする試みもその一つだ。3月30日、国土地理院はビジュアル的に明快な外国向け地図記号の15種類を発表した。

 たとえば、交番の地図記号。日本式は「×」に似た記号だが、これは警棒を2本組み合わせたかたちをイメージしている。いかにも伝わりづらいということで、おまわりさんが敬礼しているマークを採用した。郵便局の地図記号はマルの中に「〒」(もともとは郵便を扱ったかつての中央官庁・逓信(ていしん)省の「テ」から来ている)だが、これも手紙の封筒のようなマークになった。

 また、寺院を示す「卍」はナチスドイツを想起させるのでは、と三重の塔のマークにする案があった。しかし、言うまでもなく「まんじ」は仏教における吉祥の印であり、ハーケンクロイツとはデザインも異なる。そうした声を受けてひとまずは採用見送りに。異文化交流のややこしさを象徴するような一幕であった。

 外国人向け地図記号の登場をきっかけに、「日本の地図記号は難しいのでは?」という意見も噴出している。たしかに記号はそれとわかることが重要で、そもそも学校の試験で間違える者が出るのは奇妙な話だ。設定されたのが古すぎて、現代に合わなくなっている向きもあろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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